大崎知仁『屋上探偵―オクタン』

No.19
ジャンプJブックス:2006
☆☆
 明斉館高校は広い。
 三千人もの生徒を抱えているわけだから、当然めったやたらと広いのである。(後略)

確かに大規模校には入るけれど、描写から察するにこの広さは5000超のそれだと思うぞ。

明斉館高校新聞部が発行する裏新聞「明スポ」、売り上げ低迷が続く状況を打破するために立てた目玉企画は屋上のトラブルシューター、犬村元貞の密着取材だった。という何だそれみたいな設定はとりあえずおいといて。

3つの短編から成っていて、犬村のところに次々と依頼が舞い込んできて、それを次々と解決する、というまあよくあるパターン。謎解きらしきものを出しているつもりなのかもしれませんが、基本はなるようになる、といった感じの事件です。犬村の読書好きという設定をもっとこの部分に積極的に生かして欲しかったですね。

マンモス校に微妙に関わったことがある立場の自分的には、明斉館高校の描写は悪くないと思います。ただ、冒頭でも書いたように、3000人は少ないよ。あと高校だけじゃなくて、上に大学があるなり下に中学校があるなりしたほうが(作中でこれらのディテールを書く必要は無いと思いますが)よりリアリティが出るかな。

ラストは……。無理矢理連作短編にする必要性があったのでしょうか。この手の話はグダグダのまま続けていくのがベストでしょう。文学賞には絶対通らないけれど商業ベースには乗るというスタンスはプロの作家の特権ですし。伏線がほとんど無い上に少しその手のことに詳しい人ならば絶対不可能だと分かるトリックは取ってつけた印象しか与えていません。

関連本→
森博嗣『すべてがFになる』:とにかくグダグダで続けていく成功例。10作あるうちの第1作を挙げる。
古処誠二『UNKNOWN』:キャラの色づけにしか用いられていないかと思っていた小道具にこんな意味が。この位うまく使われていれば文句無いでしょう。紹介作のミントタブレットに対応。
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by fyama_tani | 2006-06-20 22:18 | 本:その他