荻原浩『コールドゲーム』
No.25
新潮文庫:2002 ☆☆☆ もうひとつの比較的新しい事務用風の本棚の中身は、まったく別物だった。数冊のコミック本をのぞけば、背表紙を読んだだけで部屋の主の性向ががまるで変わってしまったことがわかる。 この手の本って大書店でしかるべき棚に行けば置いてあるけど、本当に役に立つことなんか書いてあるの? 最近やたら本屋で見かけるような気がしないでもない荻原浩。とりあえずこれが初だけれど、凄い無難なところを突いている、という印象を受けました。主人公の高校生の周りに来る不気味な犯行予告とそれの再現、どうも犯人は中学校の時にいじめられていた奴で、そいつが復讐目的でやってるっぽい、ということで高校生なりのやり方で調査が始まるという、そんな流れ。 夏休みの時期にすることで、昼間行動していてもなんら不自然ではない+学校内の描写をあまりやらずに済む(バラバラの高校に進学した中学校時代の同級生が集まるので、これ以外の時期では不自然さを無くすのはかなり大変だろうと考えられる)、いかにもな不良たちだけでなく、優等生キャラをうまく織り込んでいる(酒の勢いで、という理由は見事)自然さなど、細かく計算されているな、と思います。 一方で、結構おいしい題材が投げっぱなしになっているのがもったいないかなと。例えば、ひきこもりの堀井はもう少しうまく使えるような気がする。ピザーラの兄ちゃんの存在は面白かったけれど。あと犯行時刻に関する事を登場人物に気づかせるのはもう少し後でも良かったかなあ。でも犯人が実は○○(ネタバレ)だった、という可能性はあの状況だったら考えるわけも無いだろうから、いいのか。 関連本→ 宮部みゆき『魔術はささやく』:高校生が主人公の作品としてはこれがベスト。さすがにこんなのはそうそう出てこないですよね。 折原一『沈黙の教室』:いじめ+同窓会というモチーフ類似。よりトリッキーなものを求めるならば。 微妙なネタバレですよー。 今読み返していたら、重大な矛盾点に気づいた。廣吉にとっての光也の罪状が、「見ているのに見なかった罪」である点には十分に納得がいくのだけれど、じゃあそうなると何で久保田みたいに被害に遭わなかった人が出てくるの? もちろん光也には亮太との関係があるから、ということは考えられるけれど、そうなると土屋が被害者リストに入っていた理由が分からなくなる。この二つを合わせると、クラス全員が復讐対象(かろうじて堀井が抜けるか抜けないか位?)になってもおかしくないと思うのだが。作中で語られていない、というだけで実は相当の悪者か、土屋。
by fyama_tani
| 2006-07-16 20:48
| 本:国内ミステリ
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小説の紹介とか化学に関する事とかを織り交ぜながら適当に。
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