城平京『名探偵に薔薇を』
No.75
創元推理文庫:1998 ☆☆☆ 「全ての謎、全ての不可解を解明できる存在を信じますか」 信じない。そんな人がいたら既に全ての謎は解明されているはずだから。 第8回鮎川哲也賞最終候補作。他の最終候補作、柄刀一『3000年の密室』、受賞作、谺健二『未明の悪夢』は読了済み。そしてこれが残った。 1つの長編というわけでもなければ、連作短編集というわけでも無い、2部構成という変わった体裁が取られた作品。両方とも、「小人地獄」と呼ばれる、現実にはありえないような設定の毒薬が中心となった事件の謎解きが一応の主題となります。 この「小人地獄」の設定、化学をかじった人間からするとリアリティのかけらも無いというか、これはいくらなんでも20世紀を舞台とした作品として無茶苦茶過ぎるだろうという気がするのですが、それは今回無視しましょう。 さて、本作では、「どんな謎でもたちどころに解明する」瀬川みゆきという登場人物がいます。この人の関わり具合が、第1部と第2部でどう変わっていくかというのが本書の核であり、ポイントになると。第2部終盤、印象がめまぐるしく変わっていくところが一番の読ませどころなのでしょう。 ただ、2部構成にした意味が弱いのがマイナスですか。第1部が第2部の単なるフリで終わってしまっている感があります。無難に普通の連作中編という形で出すべきだったと考えます。 結局、自分の中ではアイデア一発勝負の『3000年~』と比較して若干落ちるかな、という評価。『未明~』とは比べ物にならないです。あれはあっちが凄すぎる。 関連本→ 近藤史恵『ガーデン』:「名探偵」を同じような形で扱った作品だと思います。雰囲気はこちらの方が好み。 殊能将之『黒い仏』:探偵がやっていることは全く同じことだと思うのに、こちらの作品だけ物凄く叩かれているというのは、ちゃんと作品に向き合っていないように見えるからなのでしょう。
by fyama_tani
| 2007-04-15 20:45
| 本:国内ミステリ
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小説の紹介とか化学に関する事とかを織り交ぜながら適当に。
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