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折原一『倒錯の帰結』

No.80
講談社文庫:2000
☆☆☆
「あれって、わたし好みで、とってもよかったわ。でも、その後がまるでだめ。叙述トリックっていうの? 最初の頃はよかったけど、手を変え品を変え、もううんざり。飽き飽きしたわ」

自分全否定ですか。

『倒錯の死角』『倒錯のロンド』に続く3部作のラスト。構成がかなり独特。登場人物に若干の共通点はあるものの、基本的に独立した中編「首吊り島」「監禁者」があり、本の頭から読むと「首吊り島」、後ろから読むと「監禁者」となる製本業者泣かせの構成。更に、両者にとってラスト部分になる、すなわち本書の真ん中部分は「倒錯の帰結」として袋とじになっており、これを読むと今まで独立していた両編がつながるという仕掛け。

一般向けなのは「首吊り島」かなあ。孤島に行ってそこの名家で起きた連続殺人事件を解決するというどんな横溝ですかみたいなお話。「監禁者」は前二作と同じ東十条(このチョイスも凄いマニアック……)のアパートが舞台。より折原チックなのはこちら。自虐ネタ大量。そしてこっちの密室トリックは氏ならでは、という感じがする。一応、どちらから読んでもOKとなっているが、「首吊り島」で「?」と思う部分が「監禁者」で解明するくだりがあるので、素直に「首吊り島」→「監禁者」と読むのが吉。こう両編読んで見返しても、逆に読むことのメリットってあまり思いつかないなぁ……。

そして最後の解決編、袋とじ「倒錯の帰結」、これどうなのか……? 完全に一般読者を置いてきぼりにしているような気がする。少なくとも私はイマイチその趣旨というか凄さがつかめませんでした。一番最後のセクションのアレは完全にボーナストラックだと思いますが、まずその意味が分からない人は理解できないと思う。でそこから更に人を選ぶと。「首吊り島」→「監禁者」→「倒錯の帰結」とどんどん読み手がふるい落とされていくのが目に浮かぶようです……。

関連本→
麻耶雄嵩『夏と冬の奏鳴曲』:本作も主人公が徹底的にひどい目に遭うが、この作品の主人公が遭う目も相当ひどい。訳分からなさも共通してるかも。
by fyama_tani | 2007-05-13 20:54 | 本:国内ミステリ