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2007年8-9月位に読んだ本

暇がない、というか余裕がないのでまとめが追いついていません。本当は100冊目またぎだからちゃんと書きたいところだけど、もう無理。

読むペースも確実に落ちてますね……。

鮎川哲也『りら荘事件』
No.99
創元推理文庫:1958
☆☆☆

古典ですね。登場人物は学生たち、舞台は都市部からちょっと離れた山荘、そして最後に名探偵が登場して事件解決、とベタな新本格。新本格の人たちの中でこの人が神格化されてたというのも何となく納得な一作。

この本の中に出てくる、ある毒物に関する記述って本当なんですかねえ。本当ならばかなり驚き。でも軽く調べた限りでは、本書に関する言及しか出てこない。

多島斗志之『追憶列車』
No. 100
角川文庫:2003
☆☆☆

『症例A』のヒットを受けて企画された短編集なのだと思います。本作は歴史を巧く扱ったものが多く、他の作品の傾向とあわせても、何でこの人は歴史ミステリの人として認知されないのだろう? と思ってしまいます。

そんな中、『預け物』が異色中の異色。こんな作品も書くんですねこの人。

芦辺拓『紅楼夢の殺人』
No. 101
文春文庫:2004
☆☆☆☆

中国四大奇書の一つに数え上げられる、『紅楼夢』の舞台をそのまま持ってきた作品なのだそうです。何より登場人物多い! 人間関係複雑! 舞台設定も複雑! って感じで、最後まで家系図と登場人物紹介といったりきたりでしたよ。私のように頭の悪い人間には向いていないのかもしれない。

トリックのためのトリックみたいなものが多用されていますが、その理由付けは結構納得いくものかも。ちょっとヘビーなものを読みたい人にはお勧めかもしれない。

多島斗志之『<移情閣>ゲーム』
No. 102
講談社ノベルス:1985
☆☆☆☆

とうとう簡単に手に入るレベルでは多島斗志之の作品を読むものがなくなった、と思っていた(正確にはハードカバーの新刊が出ているのですが)矢先にデビュー作復刊。これは素晴らしい。

いきなり冒頭から、「中国と台湾の首脳を握手させてほしい」というやたら高いテンションで始まるこの作品、その依頼を受けた主人公塔原(モデルがミエミエ電通w)が目標達成のために策を弄する、という方向に行くのかと思いきや、孫文をめぐる重大な謎の解明へと話が動いていきます。

これ、もちろん他の例に漏れず多分に嘘が含まれているのだと思うのですが、かなり説得力のあるレベルにきています。相当調べたに違いない。そして解明に要するスケールでかい(『白楼夢』のラストもこんな感じでしたね)。

惜しいのは最後の詰めがちょっと甘いかな、という点。ある人物の動きに対して、水も漏らさぬ体制を敷いていたのは代理店側も同じなはずなのに、何でそこで見逃すかなあ。

雫井脩介『犯人に告ぐ』
No. 103
双葉文庫:2004
☆☆☆

実際の犯行としては最もおまぬけなものとされる誘拐ですが、フィクションの世界では誘拐を扱った名作多いっすね。これの特徴は「劇場型捜査」と名づけた、現職の捜査官がテレビ出演して姿の見えない犯人に直接呼びかけるという点でしょう。

このモチーフ自体、初めてのものではないと思いますし、いくつかの作品が常に思い浮かびながら読む、という感じでした。この作品が一定の評価を受けているというのは、単純な捜査陣VS犯人ではないという点でしょうか。というか途中から犯人どうでも良くなってる感があるかも。読めば分かる。

ラストはちょっと蛇足かなーと思ってしまいました。この辺りで東野圭吾の『放課後』を思い出してしまうわけですが。

松岡圭祐『千里眼 完全版』
No. 104
角川文庫:2007
☆☆

この人ずっと小学館で書いてた気がするのですが、何で角川に移ったんでしょうかね。良く分かりませんが、新作だけでなく、小学館時代の旧作も改稿して出版するらしいです。正直この人の作風には3作くらいで愛想つかしたのですが、この本のもととなった『千里眼』だけは傑作だと思っているので、久々に読んでみるかと思ったわけで。

そして読んでみたら原本を傑作たらしめていた伏線とか全部カットかよ! みたいな。もしかすると医学的にOUTだったのかもしれませんが。もしそうならば、リアリティを追求するというのも考え物ですね。あとがきで「(初版の『千里眼』は)自衛隊という設定は、極めてSF的なプロットの背景に用いるものでしかありませんでした」と本人言っていますが、それで良いんだって! と強く思った。

で、続編以降で俺が愛想付かした部分(変に現実世界で起きた出来事とリンクさせようとしているところとか)が代わりにパワーアップしてると。最近のファンは、これを見て「これは素晴らしいリニューアル!」とか思うのでしょうかねえ。私は読むなら小学館文庫版を強く勧めます。
by fyama_tani | 2007-10-15 22:40 | 本:国内ミステリ