東野圭吾『容疑者Xの献身』
No. 109
文藝春秋:2005 ☆☆☆☆ 「ははあ、そうですか。先生のお作りになる問題なら難しそうだ」 それは難易度高めだと思うぞ。昔自分は明らかな幾何の問題を関数として解いたり、その逆をやったりはしていたけれど。だから嫌われるのか。 このミス1位かつ直木賞受賞作。最近ではドラマ化された『探偵ガリレオ』に続く作品としても有名ですね。警視庁の刑事草薙と大学助教授湯川のコンビものです。 前二作『探偵ガリレオ』『予知夢』は湯川が物理学の専門家であるという設定に立脚し、物理トリックに主眼をおいたものが中心でしたが、初の長編となる本作は大分毛色が異なっております。まず物理トリックとかさして関係ない。 多分これは私が他の書評を読んでいないだけだと思うのですが、これあからさまな倒叙ものですね。読者視点から見ると、探偵と対決しているのが犯罪を犯した張本人(靖子)ではなくそれの隠蔽工作をした石神であるという点がひねりかかってますが。 まあそうなると、何で湯川シリーズでこれを? という疑問もわいてくるわけですが。今回湯川は石神という特異なキャラクターを無理なく際立たせるためだけに駆り出されたのかなあと、そんな気もします。 国内においてはあまり数が多くない倒叙ものの傑作として、これは長い間読まれていくのではないでしょうかねえ。1回限りの大技が効いたラストは(ミステリとして)圧巻。このハウダニット系な驚きだけでも十分な傑作たりえたと思います。 ただそこで話を閉じずに、ホワイダニット系に話を落としたのはおそらくガチのミステリを嫌う直木賞対策なんじゃないかと邪推してみたり。出版元が文藝春秋というあたりもお膳立ては揃って東野さん直木賞受賞おめでとうございます的な雰囲気がしますし(実際そうなったわけだが)。 関連本→ 東野圭吾『ある閉ざされた雪の山荘で』:このあたりの作品を読むと、トリックメーカーとしての才も相当なものなんじゃないか、と思います。
by fyama_tani
| 2007-12-02 21:57
| 本:国内ミステリ
|
小説の紹介とか化学に関する事とかを織り交ぜながら適当に。
カテゴリ 以前の記事 2011年 10月 2011年 08月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 最新のトラックバック ライフログ タグ 検索 その他のジャンル ファン 記事ランキング ブログジャンル 画像一覧 |
ファン申請 |
||