2008年9月くらいに読んだ本

強迫観念か何かのように読んだような気がしないでもないが、実量が大したことない。山篭りでもした方が良いのだろうか。

貫井徳郎『被害者は誰?』
No.155
講談社文庫:2003
☆☆☆

短編集。刑事の主人公が解決できなかった事件を、探偵役の先輩に持ち込んで解いてもらう、というありがちといえばありがちなタイプ。

単純な伝聞という形ではなくて、作中作の形で事件が示される、という点がちょっと変わっているかも。「探偵は誰?」はその中でも珍しいタイプ。ここでは犯人だけじゃなくて事件を解く探偵は誰か? というのも主題になってくる。これは作中作ならではの趣向、って感じがして好み。

小峰元『アルキメデスは手を汚さない』
No.156
講談社文庫:1973
☆☆☆

随所で絶賛されている作品。最近になって復刊されてまた手に入りやすくなったらしい、ということで読んでみた。

いわゆる「今の若いものの考えは分からん」というのが主題になっている作品。30年前に書かれた作品であることを踏まえると、時代が変わっても大人が子供の考えを理解できないのは変わらないんだなあということを認識させられる格好のテキストであることは確か。

だから逆にこれが突出して凄い、とは感じられなかった。乗船人数に関するトリックとか、高校生ならではなトリックが結構面白かったので、そちらにもっと重きを置いた内容の方が面白いかな? と感じた。実際にはこの辺の処理がかなり偶然に頼った形になっているのが微妙。

筒井康隆『富豪刑事』
No.157
新潮文庫:1978
☆☆☆☆

ドラマ化されたことで存在を知って、何となく気になっていたのだが今まで読まなかった。著者はSFでは大御所な人ですね。

4つの短編からなっていて、いずれも大富豪の息子である主人公が金の力を使って解決する、という内容。常識外れの金を右から左へ使える(しかも金だけでなく、有力者とのコネも網羅している)というのは、普通の人間には絶対に不可能なことであって、つまり根本にあるのは超能力者という設定の主人公、と同じなのかなあと感じた。そう捉えると本作品も一種のSFと見なせる。

ミステリとして面白い点は、当時にしてはかなり珍しいと思われる、メタ構成をかなり意識した内容にあると思う。一つ一つの短編いずれにもかなり実験的な試みがあるので、分量の割にはかなり読んだ感になる。その造りが面白いなあと。ドラマがどんなものだったのかは知りませんが、本作はもっと評価されるべき作品だと思う。

北村薫『盤上の敵』
No.158
講談社文庫:1999
☆☆☆☆

この人の書く作品って、一見ほのぼのとしているようで、その実人間の暗黒面の描写には容赦がない、という印象がある。ただ、前者の印象が強いから後者が隠れがちになっているだけで。

そういう意味では、この作品は後者を前面に押し出したもの、と言える。ダメな人も多いと聞くけれど、それは前者のイメージでしか氏を捉えてなかった人なのかな、と思った。

逆に言うと、そこで読者に媚びて毒を薄くしないところが、何度も候補に挙がってついに『容疑者Xの献身』で直木賞を獲った東野圭吾と何度も候補に挙がって未だに獲れていない氏の違いなのかも。大ネタバレなので詳細は書けないですが、この作品、『容疑者~』に負けない話の上手さと大トリックが決まった作品だと思います。特に『容疑者~』を読んだことがあるがこちらは未読、という人は是非。びっくりするから。

筒井康隆『ロートレック荘事件』
No.159
新潮文庫:1990
☆☆☆☆+

『富豪刑事』を読んだからにはSF界の巨人が書いたもう一つのミステリの傑作を読まねば、ということで。

若干微妙なのは、「大トリックがある」という前提で読まないとかなり読みづらい点。意図的なのか何なのか、凄く文章が分かりにくかった。あと、登場人物の描写も画一的な感じ。

まあラストで期待以上のことやってくれましたけどね。『十角館の殺人』のちょうど真逆を行くようなトリック? 系統としては『イニシエーション・ラブ』が近いかな(これ以上はネタバレですね)。これぞ映像化絶対不可能。小説ってメディアはこういうことができるから面白いと感じるのですよ。読んで「?」な人にも作者自身の詳細な解説があるから、安心(個人的には自分でやるべき作業な気がしますが……)。

東川篤哉『館島』
No.160
創元推理文庫:2005
☆☆

ときどき「お館さま」なミステリを読んでみようかと思うことがありまして。瀬戸内海の小島に建つ、地元では有名とされる建築家が立てた建物(ただし物語が始まる前に、その建築家はその館で変死している、という設定)が嵐で孤立するというベタ設定。別に島にはその館しかないわけじゃなくて、普通に人が住んでるから厳密には孤島というわけではないのですが、他の島の住民は一切出てこない、この辺りはリアリティをあえて無視した設定なのでしょう。

最初からずーっと違和感を感じていて、それが最後までぬぐえなかったというのが正直なところ。「ユーモアミステリ」という触れ込みらしいが、自分には全く合わなかった。どの描写も「いかにも狙ってますよ」的なものばかりで、苦痛でしかない。これ全部削ればもっとコンパクトにまとまるのに……と思いながらページめくってた。

館に関する「大トリック」も微妙。現実性が全くないので。もちろんフィクションの世界なので実現不可能なものだって全く構わないと考えているのですが、それだったら実現性とかどうでも良くなるような「理屈抜きで凄い」と感じられるものを見せて欲しい。これは何か中途半端な感じ。
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by fyama_tani | 2008-10-05 11:30 | 本:国内ミステリ