カテゴリ:化学:論文絡み( 7 )

昔の論文も侮れない、という好例

Matsui et al. 「A Convenient Trifluoromethylation of Aromatic Halides with Sodium Trifluoroacetate」
Chem. Lett. 1981, 10, 1719-1720.

前のは、脱炭酸のためにCuを使っているのですが、全く違う観点から調べていたら偶然、かなり近い事を遙か25年前に日本人がやっていたという事が判明したので合わせて。

要するにアリールハライドのハライド部分をCF3化しましょうというものなのだが、やはりCu(これは過剰量)を用いており、CF3源としてCF3COONaを用いているというのがミソ。つまり脱炭酸過程を経ている。CF3化自体あまり例が多くない(ような気がする)のと合わせて、なかなか興味深いです。

この時代は「電子投稿? 何それ?」であったせいか、世界を代表するような発見がマイナー雑誌に投稿されているということも結構普通にあるような気がします。まあそれでも凄いものは勝手に広まっていくのだと思うのですが、マイナー雑誌の宿命であまり多くの人に見られることなく、そのまま忘れ去られていった反応も以外に転がっている、ような。

実際一時期20年前に数例だけあって、まだまだ改善の余地があるにも関わらずそのまま放置されていた反応を発掘して、そこにヤマを張ってしばらく検討していた
(結局お蔵入りになったが)ことがあるのですが、まだまだそういう「埋もれたネタ」が転がっているのでしょうね。そして思いつきに乏しい自分のような人間はそこに期待するしかないみたいな。
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by fyama_tani | 2006-10-28 23:51 | 化学:論文絡み

これで完結?

Goossen et al. 「Synthesis of Biaryls via Catalytic Decarboxylative Coupling」
Science 2006, 313, 662-664.

普段この辺はチェックしていないのですが、「何か凄い論文が出ているらしい」という話だけ聞いたのを今更見てみる。

アリールハライドとアリールメタル種とのカップリング反応なんて死ぬほどやられているわけで、レビューとか読むとアリールメタル種として使える金属なんてもう何でも良いんじゃねーか、という気にさせられます。

この手の反応で特に評判が高いのがボロン酸orそのエステルを使ったSuzuki Couplingでしょうね。発見者の鈴木章先生は多分村上春樹と同じくらいノーベル賞に近いところにいると思います。

で、この論文に戻るのだが、これはカップリングパートナーをカルボン酸にしてしまえというもの。普通のカップリング反応だったら金属塩が出るところ、これは二酸化炭素が飛んでいくだけで終わると。それ以前にそんな事本当に起こるのかよ? みたいなところですが。

脱炭酸のためにCuを使っています。Pd-Cu系で触媒量OK。条件見ると中の人は相当頑張ったのだろうと思いますが(そもそもの思いつきがうまくいく事を狙っているとは思えない)、一つ一つの試薬は簡単に手に入るもの。出た直後にはギャグで追試した人間もいたんじゃないですかね。だから多分捏造では無いのでしょう。

基質一般性とかに関してはまだまだ初期段階、という感じでしょうが、これは末永く続きそうな感じですね。
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by fyama_tani | 2006-10-28 23:36 | 化学:論文絡み

目の付け所が違う

Yamamoto et al. 「Synthesis of Bicyclic p-Diiodobenzenes via Silver-Catalyzed Csp-H Iodination and Ruthenium-Catalyzed Cycloaddition」
J. Am. Chem. Soc. ASAP. (Web Release Date: June 8, 2006)

Ruで[2+2+2]。錯体自体はシンプルなものを使っていますし、基質のジインも一見この手の反応で良く使われる構造をしている。しかし、末端が官能基化されているというのが一番のウリ。このお陰で多置換ベンゼン誘導体が一度に、かつ位置完全制御で入れられるんですよねぇ。確かにそうだなぁとは思うけれど、誰も環化反応の方にばっかり目がいってこんなのやらなかったんですよね。

一つ一つの反応に目新しいところは無いけれど、うまく組み合わせて誰もできなかったことを実現させてしまった好例だと思います。
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by fyama_tani | 2006-06-10 23:11 | 化学:論文絡み

見た目ほどではない

Gnanou et al. 「High Performance Poly(styrene-b-diene-b-styrene) Triblock Copolymers from a Hydrocarbon-Soluble and Additive-Free Dicarbanionic Initiator」
J. Am. Chem. Soc. ASAP. (Web Release Date: June 1, 2006)

s-BuLiでジエンとかスチレンとかを重合させてみる。単品だったら古くから知られているし……、という代物。一応ウリはInitiatorなのだろうけれど、結局のところ長鎖アルキル入れただけだろーって気がする。小技としては良いけれどメインにするには、って感じ。
他にも凄い当たり前(というかこの反応扱っている人にとっては常識)なことを新発見であるかのように訴えたり、結構微妙な記事。

他にも突っ込みどころがある論文を2報位見つけたけれど、そっちはここに書くにはあまりに近いからパス、って事で。
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by fyama_tani | 2006-06-02 21:33 | 化学:論文絡み

生分解性絡み2つ

Armes et al. 「A New Class of Biochemically Degradable, Stimulus-Responsive Triblock Copolymer Gelators」
Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 3510-3513.

ジスルフィド部位をコアとしたABAコポリマー。ATRPは反則のような気がする。それなりに一般性あるし、末端修飾可能だけでなく、原理上もう片方にもハロゲンが入るから実質テレケリックポリマー作っているとも言えるとか、実にうらやましい話だ。

pNIPAMのコポリマーを作るとゲルになるというのは、言われてみればそうかもって感じ。本題は、グルタチオンをこのポリマーに作用させるとS-S結合が切れてゲルが壊れるって所にあるっぽい。

Angew.からもう一つ。何だこれ?

Collins et al. 「"Green" Oxidation Catalysis for Rapid Deactivation of Bacterial Spores」
Angew. Chem. Int. Ed. Eealyview. (Published Online: 4 May 2006)

使っている物質は、酸化でもするんでしょうねみたいな組み合わせ。でもどうも単純な酸化反応をやっているのでは無く、バクテリアが殺せるとかそんな話らしい。中身全然読んでいないですが、かなり怪しい感じがする記事。
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by fyama_tani | 2006-05-16 17:25 | 化学:論文絡み

片っ端から試してみる

Hocek et al. 「Synthesis of C-Aryldeoxyribosides by [2 + 2 + 2]-Cyclotrimerization Catalyzed by Rh, Ni, Co, and Ru Complexes」
Org. Lett. 2006, 8, 2051-2054.

[2+2+2]環化。微妙に核酸を思わせる基質を使っているけど、コアになる部分は至ってオーソドックスのような気がする。
とりあえず片っ端から試してみました感がある。タイトルに4つも金属種(TOCは5個)入れますか。まあこの辺なら試してもおかしくは無いと思うけれど。
むしろ引用とかを追っていけば[2+2+2]環化で使えそうな触媒を釣れそうなそんな気がしたのですが、実はほとんど読んでいないのでした。読んでいる所に何かが入って中断されたはずなのですが、それが何だったのか全く思い出せません。
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by fyama_tani | 2006-05-09 22:58 | 化学:論文絡み

光見るなら液晶より有機ELでしょう。

Hou et al. 「π-Conjugated Aromatic Enynes as a Single-Emitting Component for White Electroluminescence」
J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 5592-5593.

前から気になっていたし、今日見たらページが付いていたので、一応メモ。

自前の錯体で怪しい二量体を作って光ったり光らなかったりとか。多分有機EL絡み。合成そのものも目新しいし、更に機能評価までやってる所が凄い。

実用化っていう面だとやっぱりまだ液晶が幅利かせてるけど、将来的には断然有機ELでしょうね。液晶でまだやれる事というと、超分子絡みか。

あと、Carbazoleってこういうものにも使えるのね。どちらかというと生理活性物質云々的な骨格だと思っていたので、これは意外な発見。
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by fyama_tani | 2006-05-01 23:37 | 化学:論文絡み