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パターンがうまく作れてると思います

CrownArchive
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Sunnyvale/6160/

FF8を中心に、各種ゲームの考察を行っているサイト。全部の文章を読もうとするとそれなりの量があります。

昔一通り目を通してはいるのですが、今でも時々読み返すときがあります。論点の選択理由が明確で、それを解いていくプロセスが非常にクリアなのは凄い。筆者本人について触れられている部分が皆無なので推測するしかないのですが、「何かを考察する」という事に対して金銭的な対価を得ている人なのかもしれません。

とりあえず始めての人はFF8に関する文章から読んでみるのが良いと思います。特にクソゲーだと思っていた人は認識が変わるかも。何より、繰り返し出てくる「最大の障害はプレーヤー自身の先入観」という表現には着目すべきところがあるのでは、と思います。

自分自身に関しては、それほどまで悪くありませんでした。というか1プレイの時間だけならかなりやった類かも。このサイト上で考察されているほど考えてはいませんでしたが、精製とかアイテムコレクトとかのシステム面が遊び甲斐ありましたねー。アルティマニアの圧倒的な情報量も当時は衝撃だった。
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by fyama_tani | 2006-05-30 23:19 | 雑記

機本伸司『神様のパズル』

No.12
ハルキ文庫:2002
☆☆
「TOEの具体的な中身について、今これ以上話せない。発表もできない。容易に想像できると思うが、社会的、政治的な問題に触れてしまう恐れがあるので、扱いが難しいのだ」

フェルマーの最終定理じゃないんだから。

「宇宙を作ることは可能か?」という命題に挑むSF、という事になっています。そこで出てくるのが16歳にして大学に飛び級入学(舞台設定は近未来の日本)した天才少女。9歳にして素粒子論(だっけ?)の新理論を発表して、それが応用された新しい加速器が建設されているのだそうな。まあそういう話ですので、作中には物理の基礎理論に関するディスカッションがそれなりの量で出てくるのですよ。

でも、何ていうか全体的に甘いんだよなぁ……。まず、舞台は大学のゼミという事で、研究室内でのディスカッションが中心になっているのですけど、登場人物が第一線で研究しているという感じがまるで無く、本物さん(瀬名秀明とか森博嗣あたりね)が書いたものに遠く及ばないという印象を受けました。こういう世界に縁の無い人だったらあまり気にすることではないのでしょうが……。

そして理論部分が薄いです。本当に可能かとかいうのはまるで無視して良いとは思うのですよ。ただ、もっと「それっぽく」ディテールを詰めてほしかった。ちゃんと語られるのは俺みたいな物理のど素人(宇宙に対する研究なんか金の無駄だと思うような人です。タルコフスキーじゃないですけれど)でも知っているレベルで、一歩踏み出すと冒頭の引用文みたいに「分かっているけれど今は言えない」とかで逃げる。その辺りは、主人公綿貫の日記という体裁もうまく利用していると言える(綿貫は物理に関して何も分かっていないという設定)のですが、だったら全体の構成をもっと不連続的に汚くすべきだった。

関連本→
京極夏彦『ルー・ガルー―忌避すべき狼』:何で天才少女というと必ずハッカーなんだろう?
M・クライトン『ロスト・ワールド』:素人にも説得力を持たせるにはこれくらいディテールの書き込みが無いと。ちなみに映画より原作はずっと重い。
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by fyama_tani | 2006-05-28 22:05 | 本:その他

石持浅海『扉は閉ざされたまま』

No.11
祥伝社ノン・ノベル:2005
☆☆☆
「いいんですよ。新山さんはおそらく、もう亡くなっていますから」

考えるべき材料があるとはいってもやっぱり第一選択とは違うんじゃないかなあ。

国内作品では非常に数が少ない倒叙ものですよー。その中にあっても次の二点から更に異色であると言わざるを得ません。具体的には、1.物語中の第三者に対して最後まで犯行が露見しない(まさに、タイトル通りという感じ)2.倒叙にする最大のアドバンテージである、「犯行動機の描写」が一切無い。伏見が何故新山を殺したかについては読者に直接明かされることの無いまま物語は進行する。相当変な話だ。

特に後者が意味することだと思うのですが、本作品はリアリティとは別個のところにある、純粋な思考実験なのです。解答者であるところの読者には予め「伏見が新山を殺している」という情報が与えられているわけですが、では仮にこの情報が無かったとしても上記の事実を証明することは可能か? という問題。だから、優佳の言動に対して「普通そんな可能性を考えて指摘しないだろう」というような突込みをしてはいけないのでしょう、多分。

それほど長くないので、一気に読んでしまった方が良いです。ちょうど2時間ドラマを観るような感覚でしょうか。

関連本→
高田崇史『QED 式の密室』:これも閉ざされた部屋の扱いが独特。一気に読むのが望ましいつながり。
古畑任三郎、風間杜夫が犯人役だった回:あえて古畑を挙げる。「犯行が露見する前に犯人が分かる」名作。
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by fyama_tani | 2006-05-27 21:49 | 本:国内ミステリ

東ゆみこ『「世界の神々」がよくわかる本—ゼウス、アポロンからシヴァ、ギルガメシュまで

No.10
PHP文庫:2005
☆☆
 北欧神話の最高神、「高き者」と称されたオーディンは、次のようなことを述べている。広く旅をし、ほうぼうを遍歴した者だけが、知恵という名の富を有していると。

すなわち引きこもりに明日は無い。

タイトル通り、ギリシャ神話から北欧・ケルト・インド・メソポタミアなど、世界中の神話の登場人物についてダイジェスト的に紹介した内容となっています。それが300ページ位の文庫本一冊にまとまっているわけですから、とりあえずどんな神がいるのか知っておきたいという人にはかなりお手軽であると言えるでしょう。

ただ、やっぱりこの分量でこれだけ広い内容を扱うってのは無理がありますね。どれもこれも消化不良で終わってしまっているという感じで、所々に本書内で全く言及されていない神との関係が前提無しに出てきて、「オイオイ意味分かんねえよ」みたいな状況になっています。作者の構成力にも問題があるのかもしれませんが……。

どうせこれだけ広い内容を扱うならば、各神話間の関係についてもっと言及すると良かったのではないでしょうか。異なる神話間の神が歴史の流れの中で同一視されるようになったという事は割とありそうなので。あと、クトゥルー神話まで扱っている辺りで、明らかに編者は自分の専門外まで手を出しているのだから、日本の神話への言及がもっとあっても良いのではないかと思いました。所詮学術書では無いのだから、ディテールにこだわるよりは読みやすい文章を。
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by fyama_tani | 2006-05-26 21:48 | 本:その他

辻村深月『凍りのくじら』

No.9
講談社ノベルス:2005
☆☆☆
 大人は漫画をバカにするけど、その漫画だって満足に読めない子たちが多いことに気付いているだろうか。

日本の教育の暗部がここに。

簡単にまとめてしまうと、高校生の主人公理帆子を中心とした一夏の物語、という感じですが、やや特殊な設定がなされており、それが本作の独自性を構築していると言えます。

それは、理帆子は読書がこの上なく好きである事と、「ドラえもん」及び作者の藤子・F・不二雄氏を特別な存在として捉えている、という点です。作中では、藤子氏がSFを「少し・不思議」としたのになぞらえて、理帆子が周りの人間を「少し・F〜」と表現するシーンが頻繁に出てきます。「少し・不思議」という表現は初めて聞きましたが、帯の推薦文も書いている瀬名秀明あたりに言わせると、かなり強い影響を与えた言葉らしいですね。

そんなわけで本作では「ドラえもん」が作品の根幹を為すことになります。ドラえもんがいない世界においても同種の世界観は構築し得るか? という命題に端を発し、日本のストーリー史におけるドラえもんの位置づけにおいて一つの答えを出している、というのは少し言い過ぎでしょうか。その結果のラストは解釈が分かれる所だと思います。版元が講談社ノベルスだからかもしれませんが、ここに変な小細工はいらなかった……ような。

本に関する示唆的なエピソードも多いのも特徴ですね。理帆子の小学校時代の司書とのやり取りなんて最たるものですね。学校関係者って、本に近い所にいて本来ならば読書の楽しさを教えられるはずの人に限って何でこんな感じの馬鹿が多いのでしょうかね。

関連本→
宮部みゆき『蒲生邸事件』:作品の根底に流れるものは結構似てる?
宮部みゆき『夢にも思わない』:もう一つ宮部みゆき。結末から受ける印象が近いような気がします。
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by fyama_tani | 2006-05-25 22:23 | 本:国内ミステリ

精神科問診表で

資格関係でも就職関係でも何でも良いのですが、心理テストみたいなものって時々やらされるかと思います。例えば、

「死にたいと良く思う」
「自分はこの世界に必要無いと思う」

とかみたいに、万一そう思っていたとしても「あてはまる」と正直に答えたら絶対ネガティブな結果になるんじゃないかみたいな設問が並ぶものが典型例でしょうか。

こういうものをやるたびに気になるのは、「どういう答え方をすると『精神状態に問題がある』と判断されるのだろうか?」という点で、これを更にもう一歩進めると「答えを操作することで佯狂となる事は可能だろうか?」という命題に至ります。

もちろん問題があると判定されるためには、答えの内容だけではなくて、例えば「設問を呼んだ瞬間に頭を抱えて動けなくなる」とか「設問用紙をバラバラに裁断する」みたいな行動面も一つの要素となり得ると考えられますが、問題の単純化、及び純粋に設問意図を読み取るという目的から、回答内容のみで決定するという前提に立つのが無難でしょう。

という事で、誰かやってみて下さい☆

オプションですが、もしうまくいった場合には、それが偽装であったという事を何らかの形で証明しなければ、リアルに診療を受けることになるでしょう。また、佯狂であることを証明することは、佯狂となることよりもずっと難しい(あくまで感覚的なものですが)ような気がします。だから、考えるだけで実行に移すことはしないのです。
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by fyama_tani | 2006-05-24 23:37 | 雑記

Allen Carr『―読むだけで絶対やめられる―喫煙セラピー』

No.8
KKロングセラーズ:1996
☆☆☆
(前略)今すぐタバコをやめようとは思わず、まず本書を読み終えてください。

ここが一番のKey point。

タイトルで謳っているように、この本を最後まで読むとどんなヘビースモーカーでも禁煙できるらしいです。ところが、私生まれてからこの方タバコを一本たりとも吸った事はおろか加えたことすらありません。

じゃあ何故この本を読んだのか、という話になりますが、それはこの本の存在を知ったときにある程度内容に予想が付いたから、すなわち文字だけで禁煙させるという事は「タバコを吸う事は良くない」という命題を完全に証明する必要があるだろうと思い、どういう論理がそこに構築されているかが気になったから、というわけです。

実際そういう中身なのですが、想定される全ての反論に答えていないかなあと思ってちょっと消化不良。自分がヘビースモーカーだったら多分止められません <駄目
喫煙者が利点として挙げる点に対して一対一で反証して、結論は全て「という訳で喫煙者は社会のクズである」というように人間性を否定する内容にすり替えて、かつ「最後まで読んで下さい」という指示を延々繰り返した結果、読み終わるときには「喫煙者は人間として負け組」というのを下層意識に植えつけるような形にした方が指示に従った時に喫煙できる可能性という点では高くなると思いますが、これだとほとんどの人が最後まで読めなくなるから本が売れなくなるのだろうな。

これでやめられる人が多いという事は、喫煙者はかなりの確率で罪悪感を感じているという事なのでしょうか。利点を挙げるパートとかまるでアンフェアですし。フェアである必要は無いかもしれないけれど。
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by fyama_tani | 2006-05-17 21:19 | 本:その他

伊坂幸太郎『ラッシュライフ』

No.7
新潮文庫:2002
☆☆☆☆☆
「あなたの好きな日本語を教えて下さい」

こういう所で「鬱」とかサラリと書ける人はそれはそれで凄いと思う。

何だこれは。

メインストーリーとして4 (+1)つが併走して、もちろん一つの作品だから最後には絡んでくれないと困るわけだけど、そのスケール感が他には無いものだと感じました。

個別のストーリーそれぞれの絡み方を出来すぎだと感じるかどうかは人それぞれかもしれませんが、それぞれから意図的に関連するものだけを抜き出して再構成すれば(ここまで変に確率はそんなに高くないと思いますが)、こうなるのもある意味必然かな、と。隅々まで計算し尽くされた構成を楽しんで下さい。まだ自分の中では完全解決出来ていませんが。終わりが唐突のような気がしないでも無いですが、あまり気にならなかったのはそれだけ巧く作られているということなのでしょう。全体的には、出来の良いDQ7って感じでしょうかねえ。

やや甘めですがここは☆5つで。

関連本→
殊能将之『ハサミ男』:こんな感じで偶然が使われることもあるわけだし。
多島斗志之『症例A』:本作に対して「どうこの2つのパートが関連してくるんだ?」と思った違和感は忘れがたいものがあります。
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by fyama_tani | 2006-05-16 20:13 | 本:国内ミステリ

生分解性絡み2つ

Armes et al. 「A New Class of Biochemically Degradable, Stimulus-Responsive Triblock Copolymer Gelators」
Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 3510-3513.

ジスルフィド部位をコアとしたABAコポリマー。ATRPは反則のような気がする。それなりに一般性あるし、末端修飾可能だけでなく、原理上もう片方にもハロゲンが入るから実質テレケリックポリマー作っているとも言えるとか、実にうらやましい話だ。

pNIPAMのコポリマーを作るとゲルになるというのは、言われてみればそうかもって感じ。本題は、グルタチオンをこのポリマーに作用させるとS-S結合が切れてゲルが壊れるって所にあるっぽい。

Angew.からもう一つ。何だこれ?

Collins et al. 「"Green" Oxidation Catalysis for Rapid Deactivation of Bacterial Spores」
Angew. Chem. Int. Ed. Eealyview. (Published Online: 4 May 2006)

使っている物質は、酸化でもするんでしょうねみたいな組み合わせ。でもどうも単純な酸化反応をやっているのでは無く、バクテリアが殺せるとかそんな話らしい。中身全然読んでいないですが、かなり怪しい感じがする記事。
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by fyama_tani | 2006-05-16 17:25 | 化学:論文絡み

殊能将之『美濃牛』

No.6
講談社文庫:2000
☆☆☆☆
「目の前でこんなこと言いたくないがな、石動は恐ろしく頭が切れる。おれなんかより何十倍も頭がいいだろう。ところが、こいつはその利口な頭をろくなことに使わない。ちゃんと仕事すりゃいいのによ、わけのわからないことに頭脳を消費する」

それでこそ名探偵。

フリーライターの天瀬が取材で訪れた暮枝村。その仲介役であり、村にリゾート開発の話を持ち込んだ自称ディダクティブ・ディレクターの石動戯作に振り回されているうちに殺人事件が起こり、それに巻き込まれていくみたいな。
古き作品(といっても私は読書量が少ないので雰囲気しか分かりませんが)を思わせる舞台装置、古今東西のテキストからの多彩な引用、でも全体を覆う雰囲気はどことなくふざけているんだな。そのアンバランスさが最大の魅力。長めの話で構成も結構複雑なので、ある程度読書慣れていないと結構重いです。どうせ随所に散りばめられた小ネタが全部分かるのは作者本人くらいだ、と開き直ってしまうのが吉。
これだけ長い話ながら、その本質はラスト1ページに全て集約されているというのも中々凄いです。ネタバレも含むのでここに引用するのは避けますが、最後まで読んだ人なら何となく分かるのでは? と思います。

関連本→
柄刀一『ifの迷宮』:やはりどことなくそれっぽくない旧家が舞台、という事で。
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by fyama_tani | 2006-05-14 21:57 | 本:国内ミステリ