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必読と言われているのにまだ読んでいないミステリ

調べものをしていたら偶然こんなものを見つけた。

「必読と言われているのにまだ読んでいないミステリ」
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1051437883/

全てまとめて俺か? という位に未読が多い。多分8割以上。

とりあえず主に挙げられている中で自分が全く読んでいない作者をピックアップしてみると、

海外ではクイーン、カー、ヴァン・ダイン、クロフツ辺りは全滅。

国内でも横溝、鮎川哲也辺り全滅。あと四大奇書と呼ばれるものも全滅。最近の作者では横山秀夫も <生で見たことあるのにねえ

だからといって社会派とかハードボイルドを読んでいるのかと勘違いしないように。もっと読んでない。だんだん鬱になってきました。でもタイトル見ただけで作者名は大体出てくるんですよねぇ……。海外物で7〜8割程度、国内なら9割くらいは。ますます鬱になってまいりました。

それと、海外ミステリを「登場人物の名前が覚えられなくて読めない」って言ってる人、俺だけじゃなかったんだとちょっと安心。

ちょっと気になる書き込み。
371 :名無しのオプ:04/11/11 19:18:32 ID:IdwvJyHj
なんで義務感みたいな半分イヤイヤで読むの?
単なる娯楽図書を読みまくっていったい何がしたいの?
学校の宿題なの?

素で疑問なんスけど。



372 :名無しのオプ:04/11/11 23:06:16 ID:ev+MYSS+
いつか面白くなると信じているから。

その通り。多分歴戦の人は何回もだまされてる。自分の場合、『コズミック』がまさにそうだった。『飛蝗の農場』辺りもかなあ。逆に、最後まで読んだら面白くなってきたと感じたのは『生ける屍の死』。途中で嫌になって投げたという書き込みがあったが、何となく分かるような気がした。
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by fyama_tani | 2006-11-26 22:36 | 雑記

坂口安吾『不連続殺人事件』

No.54
角川文庫:1948
☆☆☆
 彼は十七の時、まだ中学生であったが、私のところへ文士になりたいと称して弟子入りにやってきた。僕みたいカケダシの若僧に弟子入りしたって仕様がない、大家のところへ行きなさい、と言ったら、若い者は若い者同士でさア、と変なことを言やがった。

何だそれは。一理ある考え方ではあると思うが。

坂口安吾といえば『堕落論』、『白痴』に代表されるように、日本有数の純文学の人として有名ですよ。で、そんな人が何故かミステリも書いていた、というのは一部の人には有名な話で、その一部の人にとっては本書はそれこそ日本を代表する本格ミステリ、という扱いを受けているわけです。最近新装版が出たので、今なら本屋に大量に平積みされてますよ。

さてこの話、文庫本にして300ページ程と、さして長い話では無いのですが登場人物がやたらに多い。主人公の友人、文学者歌川一馬の邸宅に様々な人が集められるという設定なのですが、のっけから大量の登場人物が出てきて、その上人間関係が複雑に錯綜している、頭の悪い自分なんかは最後までちゃんと把握出来ていなかったような。

その上人がやたら死ぬ。最終的には八連続殺人事件、となるわけで。その割には、その手のものにお約束的な、生き残りの人の間での「次は誰だ?」的なサスペンス性はほとんど描かれず、割と淡々と進んでいきます。全般的に人物描写が淡泊なんですよね。なんか、「10のうち8がいなくなれば重大だけど、1000のうち8がいなくなった所で大したこと無いだろう」的な雰囲気が読み取れます。

このような違和感は探偵役の巨勢博士の描写にも出ています。探偵としての天才的な能力を有すると鳴り物入りで登場する割には、解決編に至るまで何かをしているようには思えない。それだけなら一般のミステリにも言えなくは無いところですが、巨勢博士そのものの描写も他の登場人物に比べて多いということが無いんですね。ただ、記述者たる主人公の弟子(であり探偵的能力が優れていることを主人公が理解している)というだけで犯人から除外されているというだけ。

じゃあ人間書けないのかよ、と思わなくも無いですが、そこは流石純文学の雄、最後の最後での犯人の描写は真に迫るものがあると思わせます。この一言が作品全体を象徴していると言っても良いかもしれません。肝心のメイントリックの方はまさにパズラーど真ん中という感じで、解決編に入るまでにちゃんと自分の頭で考えて、的なことをしないと十分に楽しめないと思われます。いや凄いんだけど、自分みたいに考えない人間には合わないな、という感じ。昔の版には「読者への挑戦」があったらしいという記述を読んだことがあるのですが、少なくとも新装版には無かったですね。これは「読者への挑戦」を入れるべき作品では?

関連本→
京極夏彦『絡新婦の理』:このクラスの複雑な人間関係・犯行計画をきっちりと理解しやすいように書くには、現代ではこの作品くらい長くなってしまうかも。圧倒的完璧さがここに。
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by fyama_tani | 2006-11-26 10:14 | 本:国内ミステリ

殊能将之『鏡の中は日曜日・樒/榁』

No.53
講談社文庫:2001・2002
☆☆☆☆+
 本格ミステリに登場する奇妙な館や屋敷の住人は、不便な設計に毎日愚痴をこぼしながら生活しているのだろうか?

まあ……、お約束のようなもの……、ですからねぇ……。

長編『鏡の中は日曜日』と、ノベルス版では別になっていた『樒/榁』の2中編が一つにまとまったお得な一冊。

『鏡の中は日曜日』。いきなり第一章から精神に異常をきたしていると思われる人物の一人称で語られるというとっつきづらい設定。更に第2章では、名探偵水城優臣が活躍する鮎井郁介『梵貝荘事件』が作中作の形で出てきて、その事件はフィクションではなく、実際に起きた事件だったということになっていてその事件の再調査を頼まれた石動戯作が現代パートとして出てくる、という非常にややこしい設定になっている。ごめんちゃんと説明できない。

『梵貝荘事件』の方は、全く型どおりに「犯人は誰?」的なものです。この作品は「名探偵最後の事件」と銘打たれており、更に雑誌連載だけされて単行本にはなってない、何で? というのを現代の石動戯作は調査するわけです。まずいなこれこの手の事に興味の無い人間にとっては極めてどうでも良いことだぞ。

現代パートで出てくる人物は、『梵貝荘事件』から10数年後の人たちなわけですが、それぞれの変わりようが、いかにもこの作者らしくひねっております。そして事件の舞台となった「梵貝荘」自体も……。完全にお約束をネタにしてますな。

これだけ複雑にしたツケを最終章で清算するわけですが、その仕掛けは今までの総決算的な感じがして、結構興味深かったです。参考文献の冒頭に綾辻行人の「館シリーズ」が全部(この時点での最新作『黒猫館の殺人』まで)挙げられています(ちなみに、本作の登場人物は「館シリーズ」の登場人物の漢字を組み合わせたもの。ほとんど悪ノリの域)が、確かにあのシリーズ6作のトリックを全部混ぜ合わせて6で割ったらこうなるんだろうなあと。一つ一つの仕掛けの中には見抜きやすいものもありますが、ここまで凝った多段は珍しい。

それにしても、この作者の一連の石動戯作ものにおける石動の存在って一体……。結局、2作連続で○○ができていないってことですよねぇ。あと、このシリーズはリアルタイムで読むべきのような気が。後に本作があると知っての『黒い仏』とか、最新で別な作品があるのを知っていて本作を読むというのは、一番の驚きを損していると思われます。

『樒/榁』(ちなみに、それぞれの木へんを取ると「密室」になるというのがこのタイトルの意味)は『鏡の中は日曜日』より必ず後に読んで下さい。『樒』は水城優臣が密室殺人の謎に挑むというオーソドックスな作り。『榁』は16年後の全く同じ場所で石動戯作が主人公の話。スタンダードに過去と現代を2つの中編に分けたという感じですが、やっぱりその変わりようがひとひねりあるという感じです。

関連本→
綾辻行人『時計館の殺人』:精密に組み上げられた謎。殊能氏も真面目に書けばこういうのができる人のような気がするのだが……。
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by fyama_tani | 2006-11-14 22:10 | 本:国内ミステリ

福岡上陸で四島制覇(3日目・11/5)

―前記事(2日目、朝と夜の博多の街、鮮魚市場、吉野ヶ里遺跡)はコチラ―

朝の中州は仕事上がりの水商売関係者であふれてましたよ。

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こっちでは見たこと無いが、福岡では結構見かけたような気がする「ポプラ」なるコンビニ。弁当が独特で、ご飯は炊飯器から直によそってくれるという方式だった。しかも盛りがかなり良い。

早々にチェックアウト。今日東京に戻るが、それ前にもう一箇所回っておきたいという事で。天神まで歩いてそこから私鉄に乗る。こっちもターミナル駅として、利用者もかなり多いと思われるのに、凄い静か(日曜朝ということを差し引いてもね)。構内放送が最低限に抑えられているからなんですかねぇ。

で向かったのがそこから30分ぐらいで行ける大宰府天満宮。菅原道真を祀ったところとして有名ですよね。そして学問の神様でもあるという点も。

という事で受験シーズンとかは凄いという話は聞くのですが、何しろ自分にはまるでその線の興味が無い。何かの受験の前に、親戚だか知り合いだかの人から、「有名な神社(聞いたような気がしたが、忘れた)の高いお守り」をもらうも受験当日には存在自体を忘れている(だから当日「お守り忘れた!」という事も全く無い。数ヵ月後に気づいたような気がする)みたいな。だから大宰府だって一観光地として来ただけ。

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↑本殿ですな。

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↑いたるところに絵馬が。ほとんどが「受験合格」的な内容。あんまり見ていると不審者なので、早々に退散。奉納場所は自分で決められそうだから、意味の無い落書きとか書いて、一番目立つところに奉納してみたらどうだろう。誰かやりませんか。

日本有数の神社だからもう少し見るところがあるのかなと思っていたら、そうでも無く結構拍子抜け。参道の規模も微妙だしなあ。学問に対する日本人の思いは想像以上に強いようで。

ただ、大宰府はコレだけじゃない。すぐ隣に「九州国立博物館」なるものが去年オープンしたらしく、大宰府側から直結しているらしいので、こっちにも行ってみるかと。

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↑九州国立博物館への通路。エスカレーターで3F分くらいのぼり、そこから更に天井が七色に光る動く歩道で数100m。

さて、中身だが、常設展と特別展がそれぞれ1フロア。しかし、そのどちらも異常に広い。特別展の方には重要文化財・国宝クラスが当たり前のように並ぶ豪華さ。常設展も、単純に時代順にするのではなく、あるテーマを決めてそのテーマに関係するものを一つの部屋に固めるという方式が取られていて、他との差別化を図っているようだった。

中々面白かったのが江戸時代における、朝鮮とのやり取りの文書。ここには当然権力者の印が押されているわけだが、この印を日本側は日常的に偽造していたらしい。本物が鉄製のところ、木製の全く同じデザインのものがざくざく出てくるのがその証拠。でも、そもそも本物の印に書かれている人名も存在しないとか、もう何を信じたら良いのか分かりません。まあ、捏造というより、「いちいちもらいに行くの面倒臭いし、どうせ形式的なものだからウチらで勝手に押しても問題無いっしょ」的なものらしい。役所とかでトップの判子がそこらじゅうにばら撒かれていて、下っ端が許可無くその辺の書類に押しまくっているのと同じ感覚か。

唯一の心残りは、帰りの新幹線の関係であまりゆっくり見られなかったことか。駆け足気味で見て2時間半強。じっくり見るならば半日~一日は考えた方が良いかもしれない。それ位質・量ともに充実している。

かなり駆け足スケジュールのせいで、結局飯も食えず(待たずに入れそうな店が無かったし、実はそんなに食欲が無かった)東京行きの新幹線に乗るみたいな。やはり死ぬほど混んでいたが、一応座れたので良しとするか。

九州までの移動に飛行機を使うとか、九州内の特急を駆使するとかして、今回全く足を踏み入れていない地域に足を踏み入れてみるのも良いかも。
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by fyama_tani | 2006-11-12 22:47 | 雑記

福岡上陸で四島制覇(2日目・11/4)

―前記事(1日目、門司港レトロから博多ラーメンまで)はコチラ―

博多の街を歩いてみようか。

といってもまだ朝早いので、開いていないところも多い……。とりあえず博多駅周辺の地下街を適当に見て、そのまま中州・天神方面へ歩いていくことに。中州って誇張無く本当に川に囲まれてるのね。

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↑中州地区にあるキャナルシティという複合商業施設。その名の通り、建物内に水路が走っているのが特徴。店自体はまあ都市部に良くある、って感じで、東京からわざわざ行く場所というと微妙かも。地元の人にとっては便利な施設だと思うけどね。

そして天神。ここは地下街が凄かった。500m位? に渡って様々なテナントがぎっしり。地下街の規模としては名古屋が有名だけど、密度はこっちの方が上ではなかろうか。ちょうど天神のメインストリートの地下を走る形になっているから、主要デパートに全て地下連絡しているという点も○。今日の宿は中州に取ってあるので、また夜にということで流すだけ。

そのまんま更に歩いて昨日ラーメン食べに来た辺りまで来てしまう。博多駅からここまで地下鉄で250円というのはやっぱ高いよ。

で、ここ行ってきました。

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「鮮魚市場・市場会館」なる、地元の水産業者が多数入ったビル。すぐそばに漁港。実は、人に教えてもらうまで福岡が魚が美味いところだとは知らなかったんですよ。玄界灘に面しているとか言われればそうかなとは思いましたが、これは地理感覚ゼロですね。その港のそばにある建物に入っている食堂、これは期待できそうです。ちなみに、ガイドブックとかではまるで引っかかってこなかった。完全に地元民向けになってるみたい。函館朝市とはかなり違う。

お勧めだと教えられた「福魚食堂」で昼食。ここは凄いぞ。

・ほとんど観光客に知られていない証

→連休最盛期の昼時にも関わらず、半分位の入り(まあ観光客っぽい人はそれなりにいましたが)

→カウンターには新聞とか古そうなマンガが無造作に置かれていて、ふらっと来てそれを読みながら飯を食べて帰るオッサンが普通にいる

こんな店だが料理は凄い。

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鮭のカマ焼き(かなり大きい)、カンパチ・マグロ・生サバ(〆サバじゃないよ!)の刺身、小鉢、味噌汁がついて900円。更に辛子高菜が取り放題。これだけ充実しているにも関わらず、このメニューの名前は「A定食」という極めて投げやりなネーミング(多分日替わりで、このクオリティがここでは普通なのだろう)。このクオリティで函館だったら3000円以上取ると思います。これは絶対食べておくべきだと思いましたね。

ちなみに、ネームバリュー的には、すぐ向かいにある「おきよ食堂」の方が有名らしい。それでもガイドブックの類にはそんなに載ってないけどね。この「福魚食堂」に関してはネット上にもそんなに情報がありませんでした。まさに穴場。何でもかんでも自分で調べようとせずに、詳しい人に聞くべきだと本当思った。ここお勧めです!

まあせっかくだから福岡市街だけでなく少し足を広げたいよね、とは思うのだが何せそんなに時間は無い。片道1時間程度で行けるところが望ましい、って感じで行き先として決めたのが、佐賀県の吉野ヶ里遺跡。あれだ、教科書とかに良く載ってるのでお馴染み。その割にはそういったところに行く機会ってわざわざ作らない限りまず無いし、ということで行ってみることに。

吉野ヶ里遺跡は観光地としてそれなりに有名ではあるのだが、実はこの時期にはもっと行くべき場所がすぐ近くにあった。というのは、「佐賀バルーンフェスタ」なる熱気球の大会が毎年開かれているらしく、この日はまさにその開催日。開催に合わせて臨時の駅まで出来るという気合の入れよう。しかも、天気は快晴とコンディションも良い。そのせいか、吉野ヶ里遺跡方面へ向かう電車(遺跡の最寄り駅から更に数駅先にその臨時駅はある)には家族連れが結構いた。

後から調べると、当然一番期待するところ(大量の熱気球が終結している画)を狙うためにはちゃんとスケジュールをチェックしなければならなくて、それを外すと何も無い(どこか遠くに飛び立ってしまうので)という状況になりかねなく、もし予定を変えて会場に行ったとしてもそうなっていた可能性大(早朝に行くのが一番良いらしい)なので、まあ良いかと。

で、遺跡の最寄り駅「吉野ヶ里公園駅」。

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↑全然大きい駅ではないのに、何故か建物は立派。

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↑で、遺跡まではこういう道を歩いていく。人がいない。

駅前で係員らしきおばさんからパンフレットをもらい、ついでに道を聞く。人が全然いない(ここで降りる人はほとんどいなかった)ので、「ああやっぱりバルーンフェスタの方に客取られてるのかあ」とか考えながら遺跡へ。実際行ったらかなり客の入りは多かった。モータリゼーション万歳。

今年の春に青森まで行って、三内丸山遺跡を見てきたこともあるのですが、その時とかぶる。三内丸山遺跡に行くのには青森駅からバス(1~2時間に一本)を使ったのだが、そこでの乗客は俺含めて観光客らしき人が5人程度。「ああ過疎観光地だなあ」と思ったらみんな車で来てました、というオチ。ちなみに、その時は帰りのバスもほぼ同じ面子で、微妙に気まずかったのを覚えている。

ここは弥生時代の日本最大級の環濠集落が発見された場所として有名な場所(多分)だが、客に見せる部分に関しては、柱の跡がうんぬんとかみたいな実際の発掘様子より、再現を重視している。すなわち、実際に堀をめぐらせ(水は入っていないが)、高床式倉庫とか竪穴式住居とか見張り台とかを実際に建てて、そこに自由に入ったりできるようにしている、というのが見所のメイン。

もちろん土器類の展示もしっかりと。「土器を実際に触ってみよう!」的なコーナーで、わざわざ「これは本物です」みたいな扱いがされているのが時代かなあと。

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↑こういう感じで。ちなみにこの写真は見張り台(写真一番奥に写っているのと同じような建物が対面にもう一つ建っている)の上から撮った。

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途中、お堀を抜ける通路にこんな看板があるのを発見。フェアだ……。

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「環濠の中を実際に歩いてみよう!」的な看板が非常に目立たないところに置いてあったので入ってみた。うん微妙。ちなみに、こんな所に入ってる人は全然いなかった。南無。

未公開部分が半分くらいあるらしいのだが、それでもかなり広い。歩いているうちに、どこがどうなったのか、入園料が必要なゾーン(集落が再現されている辺りは全部有料ね)を抜け出てしまい、「この先有料です」という看板が前に立っている。別に再入場はさせてくれるだろうとは思ったが、ここでまた入ってもどうせ今まで見たところを戻るだけだし、ということで反対側の出口を目指してひたすら歩く。

吉野ヶ里公園駅から反対側のエリアはもう普通のレクレーション施設っぽくて、沢山の家族連れが遊んでいた。それだけ。電車の時間が迫っていたので早足気味で抜ける。パンフレットによれば、こちら側の出口から出た場合、吉野ヶ里公園駅まで戻るよりも一つ次の「神埼駅」を目指した方が近いとの事だったのでそちらを目指すも、何も道先案内が無いのでどう行ったら良いか分からない。幸いなのかどうか、あたり一面田んぼでかなり先まで見渡せるので、その中でそれらしき建物を見つけ、とにかくそこまで歩くことに。

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↑はるか先に見える、「それらしき建物」。一応目指す建物であっていた、ので一安心。

そして一路博多へ戻る。今日の宿は中州のど真ん中だと思ってとったホテル。だが、実際行ってみると中州川端からは若干離れているし、天神までもそれなりに歩く、ということで微妙でしたね。一泊の料金も高いし。これがブランド力か。キャナルシティ(すぐ近く)の立地自体がかなり微妙なのかもしれない。

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ホテルのすぐ隣にあった怪しい霊場(?)。更にもう一つ隣には風俗店の案内所がありました。

屋台を横目に見ながら(ところで、屋台の人って水周りはどうやって確保してるのだろう……)天神に向かい、天神の地下街から各種デパ地下をさまよう。一回外に出たら四方をライトアップされた大デパートに囲まれた交差点で、「これは凄い」と思ったのと同時に、「こんな感じの都市他にもどこかで見かけたような……」と思う。都内では無かったと思うのだが……。

都内でも買えそうなものはパス(どうせ都内でも買わないのだろうが)しつつ、結局寿司やらブリの刺身を購入して帰る。本当魚関係外れ無いですね。

―3日目(太宰府天満宮、九州国立博物館)に続く―
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by fyama_tani | 2006-11-12 22:41 | 雑記

福岡上陸で四島制覇(1日目・11/3)

日本は大きく4つの地域に分けられると思うのです。

北海道・本州・四国・九州。

本州で生まれて去年までの23年近く、本州を出たことがありませんでした。

そういう状況を脱却すべく、というわけでは無いが、1年前には四国、そして先月は北海道に行ってきたと。そうなると残るは九州。だから目的地を九州に定める。東京からお手軽に行けるところとなると新幹線が通っている福岡・博多。だからそこに行く。極めて安直。

3連休のこの時期、新幹線の指定席があっさり埋まるというのは前回の北海道行きで学習済み。まあ、始発だからどうとでもなるだろうという事で早朝の東京駅へ。

発車5分前に行ったら既に自由席も満席みたいな。前日結構遅くまで作業していたのでゆっくり寝たい所だったのにこれは厳しい。結局デッキに座り込んで名古屋まで。こういう時って自由席車両のデッキから埋まっていって、入れない人は席の間の通路にあふれてくる、って感じだが、指定席車両のデッキに行けば空いていたりするのだろうか? 決まりの上では問題無いような気がする。そんな下らないことしか考える余裕が無い。名古屋でどうにか席が空いたので、そこからはひたすら寝るのみ。本を持ってきた意味とかゼロです。

山陽新幹線って今回初めて乗ったんですけど、揺れひどくないですか? ひたすら寝ていたからそんなに気にはならなかったのだが、本とか読んでたら結構厳しかったかもしれない。あと警備員が良く回ってた。

そして敢えて博多のひとつ前の駅、小倉で降りるみたいな。「九州内に新幹線の駅が博多しかないのもアレだから何となく作っておけ」的な位にしか思っていなかった(最近知った位)が、意外と大きい駅なんですね。構内で「ぷらっと・ぴっと」という何かを狙っているとしか思えない売店を見かけつつ乗り換え。ここから15分くらいで第一目的地、門司港駅へ。

ここははるか昔、関門連絡線の発着所でもあったらしい。関門トンネルがある今はただの観光地。「門司港レトロ地区」と呼ばれているらしい。ちなみに、その存在を知ったのは1週間位前。ガイドブックで知った。今回使ったのもそうだし、函館行ったときに参考にしたのも同じシリーズだが、旅行ガイドブックはJTBが出している「タビリエ」ってのがお勧め。情報密度が他のガイドブックに比べて濃いと思う。その割には調べやすいし。

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↑「門司港レトロ」の象徴、門司港駅。大正期建築で、国の重要文化財らしいですよ。

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↑中。看板にある通り。

11月3日といえば昔だったらこの日が文化の日(今年はたまたまそうなったけどね)。合わせて重要なのが、この日は晴れの特異日(統計的に晴れることが多い日)。だからこの前の函館(暴風雨)のようなひどい目には遭わないだろうと期待してこの連休にしたというのもある。確かにちゃんと晴れた。3日間ずっと晴れだった。素晴らしい。

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↑こんな感じで。地理良く分からないが、橋の向こうは本州?

そしてこれも数日前にネット上のヘッドラインで知ったのだが、門司港地区では「焼きカレー」なるものを売り出し中で、何故か永谷園がレトルトで商品化したりもしていたりするらしい。何たる偶然、これは食べるしかない、と思うのは当然の流れ。

でも駅前にある店とかいかにも「乗っかりました」的で嫌だなあと思い(混んでたってのもあるが)、地元商店街っぽいところを歩くも、焼きカレーを扱っているような店は皆無。それらしいレストランとかはあるのだけど、ハヤシライスを推していたりして、ランチメニューに焼きカレーは無い。観光客向けメニューで、地元の人には見向きもされていない、という構図が見えてきました。

結局駅前の適当な店に入る。変な外人のオッサンが英語交じりで注文を取っている様なかなり怪しい店。どんな質問されてもプライドにかけて全て日本語で答える(「Drink. This? OK?」→「はい」みたいな)。

で焼きカレーだが。要するに、グラタン皿にご飯を入れて、上からレトルトカレーをかけて、チーズとかパン粉を散らして、最後に卵を落としてオーブンで焼けばできあがりー、という料理。ただでさえ味の良し悪しが分かりづらいカレーを、熱々にした状態で出すので益々味が分からなくなってどうとでもごまかせるというある意味アイデア料理。うん金払って食べるのはこの1回で良いや。自分ちに耐熱皿があれば作ってみても良いかもしれない(無茶苦茶簡単だと思う)が、耐熱皿が無い。まあこんな駅前で観光客が来なかったら1ヶ月と持たずに潰れるんだろうなみたいな店で食事をするのも観光の基本ですよね。

その後はしばらく探索。天気が良いというのは素晴らしい。

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↑どうやらバナナも有名らしく、土産店にはバナナグッズが多数あった。

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↑海の向こうに見える赤レンガの建物は旧門司税関。タダで中が見学できる。偽ブランドとかワシントン条約に関わる動物製品とか、麻薬の密輸入に関する資料とかが沢山。

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↑国際友好記念図書館。中は小さいながらもちゃんとした図書館のそれ。こういうところが日常的に使えるって良いなぁ……。

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↑北九州市門司三井倶楽部。あのアインシュタインが滞在したこともある、らしい。1Fはタダだがアインシュタインゾーンは有料。

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↑1日に数回開閉するらしい、はね橋。黄昏。

この地域は徒歩圏内にコンパクトに見所が固まってるから、お手軽度は高いですね。これは帰ってから知ったのだが、実は関門トンネルには歩道があるらしく、その入り口がこの近く(バス利用かも)にあったらしい。しかも片道15分程度で歩けてしまう模様。ちょっと歩いてみたかった……。

門司港から博多までは在来線快速で1時間半程度。新幹線で1駅の割にはかなり距離があるような気がした(快速で1時間半は上野―宇都宮間の時間とほぼ同じ)。スピードも普通に出てるっぽいのにな。福岡って意外と広いのか?

さて、博多ではとりあえずラーメンを食べよう、という事に。実は今回、自分としては極めて珍しいことに事前にリサーチをかけていて、お勧めと紹介された店にとりあえずは行くことに。ホテルのある駅周辺からは離れているっぽかったので地下鉄利用。初乗りの200円はまあ名古屋とか大阪もそうだった気がするから許す(この点は東京がかなり安いと思う)として、数駅先に行くだけですぐ250円になるって何。切符売り場で、「高えーよ!」って叫んでたカップルがいたが、さもありなん。自分の使ってるところで比較すると、都心エリアの本郷三丁目から埼玉県の和光市まで行ってもお釣りが来ます(片道230円)。

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↑これが行った店。「秀ちゃんラーメン」という所。割と人気の店らしいので、かなり並ぶのも覚悟していたが、意外とあっさり入れた。ちなみに、これは食べた後に撮影。この時にはそれなりに並んでいたので近くで撮るのはアレだし、じゃあ向かいの通りから撮るかと思ったら向かいの店の店主らしきオヤジが店の入り口に仁王立ちしていたので、撮って小走りで逃げる <思いっきり不審者

ベタにラーメンを注文。ラーメンは店主らしきオヤジが全て管理しているっぽく、おいしくいただくことができたが、その他のサイドメニューはフリーターっぽい兄ちゃんが適当に作ってる感が。餃子の焼き方とか怪しいし。トッピングの紅しょうがが紅じゃない(ただしょうがを甘酢漬けにしただけ)ってのが独特なのか(最初モヤシかと思った)? 見た目はギトギト感があるが、食べるとそうでも無いって感じ。食べている間、バーナーで何かを炙っているのが気になって仕方がなかったが、どうやら炙りチャーシューメンの炙りらしい。そっちにすれば良かったかな。

更にもう一軒。どちらかというとネタサイドとしていろんなところに出ていて、「秀ちゃんラーメン」から歩けなくも無い距離だったので行ってみる。

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「元祖長浜屋」。メニューがラーメンだけだから「店に入った人数=注文するラーメンの数」となる超合理主義。普通、メニュー一種類だけといっても大盛りがあったりトッピングがあったりことを考えると、この潔さはかなり珍しい。店の雰囲気は殺伐。家族連れも割と多い。昔、「名古屋では喫茶店のモーニングを家族連れで食べることは珍しくない」という話を聞いて、「いくらなんでもそれはネタだろ」と思いつつ朝の喫茶店行ったら、本当に家族連れがいて衝撃を受けた時の感覚に近い。そしてガキの集団が軒先にぶら下がって建物(プレハブに毛が生えたようなもの)を揺らしていたり。なんてカオスだ。

肝心のラーメンは麺の量が結構あって400円と、費用対量は極めて良い。替え玉が50円という事を考えると驚異的ですらある。ただ、「おいしいものを食べに行く」という目的で行く店では無いと思う。

2点に共通している点は、豚骨独特? の臭いだろうか。店内に入ったときから「何だコレは?」みたいな臭いがして、ラーメンが自分のところに運ばれてきてああコレ由来かみたいな。たまに「一蘭」のラーメンを食べることがあって、ウリの一つとして「臭みの全く無いスープです」というのがあっても「まあこんなもんじゃね?」と思っていたのだが、博多本場のラーメンは臭って当たり前っぽい。つまり自分が単にこれまでちゃんとしたものを食べてきてなかったと。あと塩気が強い気がする。「秀ちゃんラーメン」の方では特に顕著だった。後半になって慣れてくると結構それは良い方向に作用していると思う。

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ラーメンとは関係無いが、途中で見かけた怪しい店。「バイキングうどん」? セルフ方式のうどん屋で、トッピングが定額で取り放題、ってことだと思うが……。

ホテルに戻り、トイレで水を流したら水が止まらなくなり、フロント呼び出し。これまでいろいろなビジネスホテルに泊まってきたが、フロントに電話かけて呼び出したのは実は初めてだったりする。単に水貯めるところの弁が開きっぱなしになっていたというだけで、実家のトイレが良くそういう状態になる(直せよ)から、その水貯める場所の蓋の開け方さえ知ってしまえば自分で処理可能。だからといって、次の日の朝もう一度水が止まらなくなるというのはやめて下さい。

―2日目(朝と夜の博多の街、鮮魚市場、吉野ヶ里遺跡)に続く―
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by fyama_tani | 2006-11-12 22:34 | 雑記

伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』

No.52
新潮文庫:2000
☆☆☆
「急いでいる人のためにエスカレーターの右端を空けておくってのは、ありゃ、何の常識だい?」

常識っていうか起源は何なのだろうね。

主人公の伊藤はコンビニ強盗(未遂)から逃走しているうちに、気づいたら見知らぬ島に理由もなく連れてこられていた、というのが物語の始まり。

そこにいる人が変わっているというのは、ベクトルの向きが違うだけで、今までのミステリにも良くある形式ではないかと思われます。変わっているのは、物語に対する伊藤の立場ではないでしょうか。普通、理不尽な理由で見知らぬ土地に連れてこられた系の話では、何故かもの凄い命の危険にさらされてみたり、脱出する方法が見つからなくて必死になって考えたり、というサスペンス性が全面に出される事が多いのですが、本作はその両方ともに無縁。伊藤がすぐに島を出ないのも、「仙台に戻って逮捕されるのが嫌」という割と後ろ向きな理由だけ。要するに、普通の人が新しい土地に旅行に来ました、というのと同じスタンスなのですね。

その島の変わった様子が伊藤の視点を通して語られつつ、「未来が見える」カカシが何故殺されたのか? という謎が提出されます。伊藤はこの問題について一応真面目に考えているみたいですが、このカカシに依存していた島の人間ならともかく、彼には直接関係ないですし、積極的に疑われているわけでもない。ただ何となく気になるから、というだけで関わっているという感じです。

更に、伊藤と同じく島の外から来た曽根川という男も、伊藤と共にキーマンになるのかと思いきや、「何か嫌な感じの男」という評価でまるで関わり合いを持とうとしなかったり、全てにおいて「どこかズレている」という感じの作品です。

終盤、バラバラに撒かれたエピソードを一挙にまとめ、かつ殺されたカカシの謎に関しても論理的な解決が見られるという手腕はかなりのものです。で、これがデビュー作、この人はここから二つの方向に行けたと思うのですよ。一つは謎の解決を中心に据えたお話、もう一つは様々なエピソードをコラージュ的につなげて一つの物語を作るという構成上の挑戦。結局、後者を選んで、それで書かれたのが『ラッシュライフ』であり、以後の氏の活躍へつながっているのでしょう。だから、基本として本作を押さえるのは割とアリだと思われます。

関連本→
辻村深月『冷たい校舎の時は止まる』:不思議な世界に突然放り込まれた主人公たち、何エピソードものが併走、独自のルールに基づいて最後に一挙解決って事で。
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by fyama_tani | 2006-11-11 23:09 | 本:国内ミステリ

多島斗志之『海上タクシー<ガル3号>備忘録』

No.51
創元推理文庫:1996
☆☆☆
「うまく説明できれば、苦労はない。四十五年間のおれの人生をあんたがそっくり辿りなおさない限り、あんたにおれを理解することはできない。その逆も言える。あんたの人生をまるごと生きてみない限り、おれはあんたの全てを理解することはできないんだ。人間は、他人をほんとうに理解することなんてできはしない」

でも船が運転できる位に器用ならばどうにかなる。

数ヶ月前にやっぱり文庫化された『二島縁起』に同じく、瀬戸内の海で海上タクシー業を行う寺田が主人公。こちらは7つからなる短編集となっています。長編の『二島縁起』とどちらから読んだ方が良いか……難しいところです。気が向いた方から。『二島縁起』で地図が無いのはやっぱり読みづらかったのか、今回は各短編ごとに舞台となる地域の地図が(ネタバレしない程度に詳しく)載っています。これはありがたい。

基本的には後日談の体裁が取られています。そのせいか、かなり凄いことが起きているにも関わらず、どことなく乾いた雰囲気が全体的に漂っています。これは、熱い行動をしている割に言動は醒めたところがある、寺田のキャラにも通じているのでしょう。また、やり遂げた事に対する見返りが必要最低限(中には、「えこの程度?」みたいなものも)でしか無いというのも関係しているかもしれません。

タイトルからしてそうだし、実際中身もかなり変化球な「N7↑」から始まって、寺田の人生観が垣間見えるような「灘」で終わり、多分「灘」を持ってこのシリーズは完結なのでしょう。無理矢理続ける気になれば可能だとは思いますが、引き際が美しいのもこの話には合っている、という気がします。

関連本→
多島斗志之『不思議島』:登場人物は違うけれど、舞台はやはり瀬戸内海。タイトル通り、不思議な雰囲気の作品です。
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by fyama_tani | 2006-11-09 22:25 | 本:国内ミステリ

石持浅海『月の扉』

No.50
光文社文庫:2003
☆☆☆☆
「確かにそうだな。我々は今、ハイジャックで忙しい」

確かに、忙しい時に邪魔が入っては困るな。

なにこれこの特殊状況、って感じの舞台設定。メインとして据えられる謎はよくある密室殺人なのですが、密室というのがハイジャックされた機内。そして主人公たちはそのハイジャック犯。つまり、自分たちが犯人でなければ、どうやって管理下においたはずの乗客は犯行ができたの? ということになる訳。

序盤ではハイジャックを成功させるための戦略が描かれているのですが、まずこれが手抜きがあまり無い感じで非常に好感が持てます。本気で事を起こそうとする人間だったら最低でもこの位は考えないとね。実行後の状況判断も中々。

その結果、機内で殺人事件が起きていることを警察の面々は知れなくて、それぞれにおいて目的が微妙にずれた頭脳戦が展開されることになる、と。読者にとっても、「何でこの人たちはハイジャックを起こすに至ったの?」という点が魅力的なサブの謎として提示されます。開示のタイミングも巧いと思う。

機内で急遽探偵役に「指名」された「座間味くん」は、本作の緊迫した謎解きに一役かっているとは思うのですが、この状況でちょっと頭切れすぎじゃない? と感じたのが、ややマイナスか。この人の作品って他にもう1作読んだだけですが、いきなり探偵役になる割には凄まじく頭が切れるという点が共通していて、それがちょっと違和感かも。

ラストシーンの何とも言えない不可解さと合わせて、独特の舞台設定を隅から隅まで味わって欲しい、そんな作品です。

関連本→
辻村深月『凍りのくじら』:敢えてこれを。ラストにおける処理方法の独特さに、通じるものがあると思います。
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by fyama_tani | 2006-11-07 22:50 | 本:国内ミステリ

恩田陸『ねじの回転―FEBRUARY MOMENT』

No.49
集英社文庫:2002
☆☆☆
 俺はただの変人だ。法華経にかぶれ、紙の上の戦争を夢想した偏屈な男に過ぎない。

それを実現させてしまったというのは偉大な事なのか、それとも犯罪的行為なのか。

舞台はタイムトラベルの技術が完成したとされる近未来。でも時代設定は昭和初期の日本。というのは、タイムトラベルの技術を用いて過去の改変(「聖なる暗殺」と作中では称されている)を行った結果、もともとの時代に原因不明の難病(HIDSと呼ばれているらしい)が流行ってしまい、人類滅亡の危機になった、さあどうしようという事になり、その解決策として挙げられたのが、1936年2月26日の東京、いわゆる「二・二六事件」に介入し、「過去の修復」を行うということで、だから近未来でありながら昭和初期の日本で物語は進行する、というそんなSF。

ああややこしい。

で、「過去の修復」を行うためにその未来な人たちは協力者をその時代の人物に求めていて、それで選ばれたのが安藤輝三大尉・栗原安秀中尉・石原莞爾大佐の3人だった。

と言われてこの3人が何者か分かりますか? あと、安藤・栗原が陸軍皇道派に対して石原は敵対勢力の統制派だと即座に理解できたりします? まして、その統制派のドンこそがあの東条英機で、でも東条と石原の仲は異常に悪いとか知ってます?

この辺りは日本史の教科書でもあまり書かれていない事なので、知らない人がほとんどでは。事実、俺も栗原安秀は知らなかったし、襲撃された人物の中に鈴木貫太郎(後に太平洋戦争最後の総理大臣になる)がいたということも知りませんでした。

で、何でこんなことグダグダ書いているかというと、そういった知識を前提にしているかのように物語が進んでいくんですよ。言い換えると、未確定要素があまりに多い。ある面に対してはちゃんと答えが提示されていて、一見それだけを見ると綺麗に決まっているような気がするけれど、「じゃあこの件はどうなったのよ?」と突っ込み始めるとキリが無い。そもそも、「何で二・二六事件に介入する必要があったのか?」という点から釈然としません。日本近代史の中では最も不可解な点が多い事件の一つであるという点は否定しませんが、全世界的に見て(介入している未来人は、国連職員という設定)重要な事件かどうかというと怪しいものです。早い話が軍の内輪揉めですからね。

ある程度背景を知っているので、雰囲気的にはそこそこ楽しめたのですが、全く知らない人が読んだらどう感じるのでしょうか。実在した人物とは考えずに、純粋なフィクションとしてよんでしまうのでしょうかねえ。

関連本→
宮部みゆき『蒲生邸事件』:これも二・二六事件を扱っている、という事で頻繁に比較されている。こちらはメインに架空の陸軍大将を据えていて、純粋なフィクションという立場を取っている。個人的には、作品の出来はこちらの方がずっと上だと感じた。
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by fyama_tani | 2006-11-02 23:47 | 本:その他