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石田衣良『骨音―池袋ウエストゲートパークIII』

No. 98
文春文庫:2002
☆☆☆
近頃の人間はみなひどく洗練されているから、必ずなにかひとつ依存の対象を用意しておくのがエチケットらしい。そうでないとパーティでの会話の輪にはいれないのだろう。

なるほど。だから洗練されていない駄目人間の私は何にも打ち込めなくて、社会の輪から離れていくのですね。

池袋ウエストゲートパークその3。流石にここに来てこれまでの作品にあったような加速度は減衰してきたかな、というのが第一印象。まあそうそうマコトが事件に巻き込まれるシチュエーション、というのも変な訳で、それにある程度折り合いをつけるためにはパターン化されるのもいたしかたないところか。

地域通貨とか近年の話題をそつなく取り入れている点はやっぱり見事。でも反面ドラッグに関する描写は微妙な点多し。でもそれは俺が地域通貨に関しては通り一遍の知識しか無い一方、ドラッグに関してはある程度(アプローチは別だけど)あるからアラが目立つのかも、と思わなくもない。すなわち、結構いい加減な知識でも書きようでどうとでもなるのかなあと。

やっぱ本作のハイライトは、「西一番街テイクアウト」でしょう。シリーズ最初から確たる存在感を出してきた「おふくろ」がいよいよ出陣。本作が書かれたころになってくるとドラマ化もされてだんだん評判が上がってきて、その中でおふくろ出陣を希望していた人も多かったはず。その期待に見事沿う活躍っぷりが熱い。やり過ぎもアレだけど、あと1作くらいはまたおふくろ大活躍ものが読んでみたい。

関連本→
京極夏彦『今昔続百鬼―雲』:シリーズ内で一見地味な扱いだった一主人公のスピンオフは時にこんな面白い作品を生む。
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by fyama_tani | 2007-08-26 22:57 | 本:国内ミステリ

一蘭 アトレ上野 山下口店@上野 (ラーメン)

No.25

公式

食べログ

ラーメンデータベース

07/08/25 訪問

場所:JR上野駅、山下口出たところ。中央改札からアトレ上野を抜けるのが一番分かりやすいか?

客層:1~2人。でも複数人でいっても隔離されてしまうから1人で行くべき店かも。年齢層は良く分からないが比較的若いと思う。

店内:カウンターのみ。それぞれ仕切りがされていて、半個室のような状況になっている。特許モノらしい。

予算:1000円前後。

九州豚骨ラーメンの店でも、その独特なシステムで有名なところですね。ラーメンの味を紙に書いて細かく指定するとか、店員の顔が一切見えない接客とか。個人的には、紙に書かれてそこから選ぶという方式は多少複雑なシステムでも理解しやすくなるし(アレを口頭注文のみにしたら初めてでは訳分からなくなること必須)、店員の顔が見えないといってもやるべきことはきちっとやられているので、概ね好印象。

でもリニューアルしてちょっと落ちたかなー。ここはカウンターに給水ユニットが取り付けられているのですが、その水の質が落ちたような気がする。ここの水はかなり美味しかった記憶があるので、勿体無い。あと入り口と出口が何故か反対になっていた(最初素で間違えた)。何でそうしたのか良く分からない。

味は、「スープに臭みがない」ことを一つのウリにしているけれど、最初これの意味が良く分からなかったのですよ。その後博多で地元民に有名なラーメン食べて納得。あちらの豚骨スープって店中に充満するくらい匂うのですね。それが全く無いのは確かに本場博多では衝撃的だったのかも。でも東京の豚骨ってこんなもののような気が。「秘伝のタレ」と呼ばれる辛味も、普通は辛子高菜でやるものだと理解すれば、実は奇抜ではない。この辺り売り出し方の勝利でしょう。

1人でふらっと入って食べるのには中々良いラーメンだと思うのですが、高いことが難点。あの量で+替玉やると1000円近くいくってのはちょっと強気過ぎないだろうか(+半替玉くらいで不普通の店の一杯分レベル?)。他人の目線をシャットアウトすることにより、思う存分替玉をしてもらうという思想はわかるけれど、この値段が邪魔しているような気がしてならない。
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by fyama_tani | 2007-08-26 22:19 | 都内食事

竹本健治『トランプ殺人事件』

No. 97
角川文庫:1981
☆☆☆
「面白いな。基本的なルールは簡単で、そこから導かれた二次的な概念がワン・クッションになるところは、囲碁とそっくりだよ。……そういえば、中国では国家が子供達に、頭の働きを高めるゲームとして、囲碁・象棋・チェス・ブリッジの四つを学校で教えているんだって。そのうち、中国はゲーム王国になるよ」

この話本当なんですかね。ゲーム王国にはなっても頭の働きとは関係ないと思いますが。

『囲碁殺人事件』『将棋殺人事件』に続くゲーム三部作のラストを飾る作品。『将棋~』でラストにちょっとだけ出てきた精神科医の天野が須堂らに持ち込んできた事件が主題となります。

赤のカード、黒のカードの二部構成、それぞれがA~Kの13章から成ると、トランプを強く意識した構成。もちろん事件もトランプに関するもの。しかし、中盤から普通の作品とはかなり異なる展開を見せます。

メインに扱われるゲームは、「コントラクト・ブリッジ」。多分日本においては囲碁や将棋に比べてルールを知っている人が少ないゲームであると思われます(俺はどれも知らんけど)。そんな状況であるにも関わらず、赤のカードの部では専門用語が飛び交い、ルールを知らない人にとっては完全に置いてけぼりを食らわせるような描写が続く。「何だこれ?」と思ったところで赤のカード終盤、唐突にコントラクト・ブリッジに関する詳細なルール説明が出てくる。そこには小説的な要素は皆無。重ねて、「何だこれ?」と思うな普通は。

そして、黒のカードを読むに当たって、「何だこれ?」が「何だこれ!」となること請け合い。良くこんなこと思いつくよなあ。でもやっぱり「何だこれ?」と思う部分が新たに出てくるはず。意図的なのか、そちらに対する答えは用意されていない(Extra Jokerの章が一応そうなのか?)。三部作全体としてもかなりあっさりとした幕切れ(とどうとでも解釈可能なような後日譚)と相まって、『将棋~』以上に煙に巻かれた感が。さすが意図的に不可解感を出すのが上手い作者ですね。

関連本→
泡坂妻夫『しあわせの書』:これもどうやったらこんなものが書けるんだ、と思った。信じられん。
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by fyama_tani | 2007-08-26 21:55 | 本:国内ミステリ

石持浅海『水の迷宮』

No. 96
光文社文庫:2004
☆☆☆☆+
「夢を見るには、資格がいるんですよ」

身の程があるというか。私は屋根のあるところで寝られるくらいのお金がもらえれば良いです。

水族館が舞台のお話ってあんまり無いんじゃないだろうか。その水族館、羽田国際環境水族館では3年前に飼育係長の片山が不慮の事故で亡くなっており、その命日である日に不思議な脅迫メールがスタッフ陣に届く、というところから物語ははじまります。

そして誰が、何の目的で、というお決まりのディスカッションの最中、スタッフの1人が唐突に殺されると。登場人物が誰も殺人というシチュエーションを想像できないような状況の事件が起こる中で殺人が起こる、という流れはこの人の別作品『月の扉』に通じるものがありますね。両作品に言えるもう一つの点として、外部に事件の進行を知られない状況の作り方に非常に説得力があることが挙げられます。これがこの人の作品の強みでしょうね。

でも終盤に至って「何故片山は死の直前連日深夜まで水族館に残っていたのか?」ということへの答えが明かされた時点で、私はこれまでの話の流れがどうでも良くなりましたね。このアイデアはまさに奇想というにふさわしいスケールを持ったものでしょう。もちろん、3秒考えればこんなことは実現不可能であることは明らかなのですが、まず思考のラインに乗ってくるということが凄い。殺人のトリックどうこう以前に、このアイデアを元にこの作品は書かれたに違いない。

ところで、本作で探偵役を務める深澤という男は、『月の扉』での「座間味くん」と何らかの関係があるのでしょうか。

関連本→
松岡圭祐『千里眼』:これも文句無しの奇想の連発。これ以降のシリーズは微妙かもだけど、この作品の密度の高さは異常。
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by fyama_tani | 2007-08-20 23:11 | 本:国内ミステリ

みんみん@池袋 (中華料理・定食)

No.24

公式

食べログ

07/08/11 訪問

場所:JR池袋駅東口方面出て明治通りをビックカメラの方向へ。ヤマダ電機を過ぎたところの路地を左に。向かいにはラーメン店「えるびす」がある。

客層:1~2人。労働者っぽいオヤジ多し。昼間からビール飲んでるのがデフォルトみたいな。

店内:カウンターのみ。細長い店内は見た目よりキャパシティあるかも。年季の入った中華料理店、という感じ。

予算:1000円前後。

場所も場所だし、パッと見目立たない外観なので知名度はあまり高くない気がする。でもここはとんでもないものを出す。それが名物のジャンボ餃子。ちなみに普通の餃子は、無い。

基本的には一品料理+ごはん、スープという定食スタイルで食べるという店。名物の餃子はセットメニューとして頼むのがベタか。餃子5個+半チャーハンというセットを頼んだ(客の半分くらいはこれか餃子とラーメンのセットを頼んでいた)。

半チャーハンと言いつつ、ちょっと少な目で出す店の1人前くらいはあるんじゃねみたいなチャーハンを食べていると(これの味は特に普通)、でかい皿に乗って餃子登場。1個辺りの大きさが10cm近くあるとかおかしいから。

この餃子、もう少し皮に焼き目を付けても良いんじゃないかと思ったけれど、決して大味になることは無く、無難においしいと思いました。肉汁がかなり出てくるけれど、この大きさを一口で食べるのは不可能、そうなると肉汁がこぼれてしまうわけで、その処理に困るという点は微妙。

で何よりこれ5個は結構飽きる。しかし、この店の凄いところは、実は1個単位の注文も可能という点。ちなみに1個100円。2個も食べれば普通の店の餃子1人前くらいの量はあるとすればわずか200円。これはお徳。実際、定食に餃子2個プラスという組み合わせの客も結構いた。

「みんみん」で餃子が売りというとどうしても宇都宮の方を思い浮かべてしまうが、マイナーどころもがんばっている(ちなみに宇都宮の店とは何にも関係ない)ものだ。
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by fyama_tani | 2007-08-20 22:47 | 都内食事

伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』

No. 95
創元推理文庫:2003
☆☆☆
「ブータンというのは、ヒマラヤのほうにある小さな国でね」
「地図に載ってます?」
「君は今、相当、失礼な発言をしたぞ」

自分がこの手の発言をした後って凹む。全く頭が働いていないことを意味してるし。

1人暮らしをはじめて早々、一冊の広辞苑のために書店強盗をしよう、ともちかけられるシーンからスタート。このへんが非常に作者らしいですね。

この作品より前の作品、『オーデュボンの祈り』『ラッシュライフ』あたりはこの人独自のひねり方がされてるなーという感じで、個性的という表現がしっくりくるものでしょう。一方、本作に関してはその面影はもちろん随所で見られるのですが、ひねり方はミステリ的にかなりスタンダードな部類だと思われます。多少慣れていれば過去と現在のカットバック手法と、出会いの数行のやり取りで大体の構成は読むこともそう難しくはないかも。

結果、この作品は近年のミステリに対する良い導入になるのでは、と思った。この人の初期の作品群ってもちろん面白いのですが、そこからどう他の作品に手をのばしていくのよ、って考えたときに、あまりに個性的過ぎてちょっと見つけづらい。一方、この作品のトリックが気に入った人ならば、他のいわゆる「映像化が難しい」とされる作品を読んでも違和感無く楽しめるのでは。小説ならではの仕掛けを楽しむのがわざわざ本という媒体を選ぶ理由だと俺は思うので、こういう傾向は良いと思います。逆に、他の伊坂作品OKででもこれは受け付けなかった、という人は、こういうのが喜ばれるから活字文化は衰退するんだ、と思ってください。間違ってないので。

底本となったレーベル「ミステリ・フロンティア」は面白いかもと今更。やはり最近文庫化された『ヘビイチゴ・サナトリウム』、ノベルス版が出た『BG、あるいは死せるカイニス』とか初期の作品が廉価版で出るようになってきてますよ、と。未文庫化でも、『シャドウ』とか『少女には向かない職業』とかもここから出てるのですよね……。

関連本→
↑で「映像化が難しい」というニュアンスで本作を位置づけているけれど、映画化された。見てないけど、まあギリで可能かなあ、とは思う。だけど、
京極夏彦『姑獲鳥の夏』
殊能将之『ハサミ男』
この2作に関してはどうやって映画化したのか理解に苦しむ。大幅改変しない限り無理だろ(そして、この2作ともその時点で作品自体が終わる)。ちなみに、『ハサミ男』は『アヒルと~』が面白いと思ったなら次に読んでみる価値アリかも。
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by fyama_tani | 2007-08-03 23:47 | 本:国内ミステリ