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2008年6-7月くらいに読んだ本

長めの作品がまとまった、というのもあるのですが、やる気が出なくてペース落ちてます。平気で1週間くらい何も読まない期間があったりと。

瀬名秀明『デカルトの密室』
No.142
新潮文庫:2005
☆☆☆

ミステリ……というとちょっと違うのかな。教養小説的な要素が強いのかも。後半の議論はそのままアンチミステリに関する議論に置き換えられそう。ロボットものとしても、まあ気軽に読める内容ではない。『すべてがFになる』を明らかに意識しているであろう登場人物の設定があまり好きになれなかった……。

銀林みのる『鉄塔 武蔵野線』
No.143
ソフトバンク文庫:1997
☆☆☆

送電線沿いに鉄塔を辿っていき、そのナンバリングが「1」となった先には何があるか? という問題を解明すべく実際に夏休みの小学生が冒険してみた、という物語。アイデアが秀逸すぎ、ということで昔から気になっていた。

実在の鉄塔がベースになっているので、その写真が載っているのだが、形に関する議論がかなりマニアック。そして律儀に1本1本日記形式で辿っていく。これは流石に飽きた。物語的時間進行で5本一気に飛ばすとかそういう処理が欲しかった。普段文章を書かないオッサンが昔の思い出話をしました、的な文体が合わなかったのかも。

石田衣良『ブルータワー』
No.144
徳間文庫:2004
☆☆☆☆

脳腫瘍に冒され余命いくばくもない中年男性が何故か意識だけ未来世界に飛び、そこの危機的状況を救う的な話。現実世界の問題とのシンクロ感は、『ブレイブ・ストーリー』を思わせる。

舞台設定も適度に複雑でありながら分かりやすく、エンターテイメントの王道を行くような作品です。ただ、終盤の解決策は、「それが確実な方法だけど、並みの人間には不可能だよなぁ……」と思っていたのでそのまんまだったことに「ねーよw」って思った。まあファンタジーだし。

京極夏彦『邪魅の雫』
No.145
講談社ノベルス:2006
☆☆☆

京極堂シリーズはどんどん一見さんお断りな雰囲気になってるなあ……。やはり『絡新婦の理』がピークだった感がある。この作品も綺麗にまとまっているのだが、何しろ長い。犯人像をぼかす狙いがあるとはいえ、ここまで長くする必要があるのかと。そういう登場人物ではなく、読者を試すような試みを入れてくる姿勢は嫌いじゃないけど。

ラストの中禅寺による解決編は、民俗学的薀蓄と実際の事件の構成が有機的に絡み合って、ここ数作品の中では一番綺麗にまとまっていると思う。それだけにそこまでの長さ(ノベルス二段組で約700ページ)が惜しい。

パトリシア・コーンウェル『真犯人』
No.146
講談社文庫:1993
☆☆☆

シリーズ物、なんだけどシリーズ物によくあるような安定感があまり感じられない、という印象をこれには持っている。多分毎回主人公周りの設定が変わり過ぎなことが原因。同じ登場人物に対する描写も作ごとに全然違う(しかも唐突に)なので油断ならないし。

中身としては、当時でよくこんなこと思いついたな、という犯人入れ替えに関心。逆に今だと不自然だと思いますがー。

石持浅海『セリヌンティウスの船』
No.147
光文社文庫:2005
☆☆☆

この人の思考実験的世界観は好き嫌いが分かれるとは思いますが、既存パターンを壊してやれ、という意気込みは素直に凄いと思う。本作は仲間内の誰かが犯人に違いない、というありがち状況において、サスペンス性の付与を目的として一般的にやられる「お互いがお互いを信じられずにどんどん雰囲気がおかしくなってくる」という状況を真っ先に全否定するところから議論がスタートする。で本当に解決すんの? というのがポイント。

動機や犯人像には正直「?」なところもあるが、同時に提示される『走れメロス(タイトルもこれがモチーフになっている)』に関するある解釈は、『走れメロス』読んだことないけど読んでみようかなあと思わせるような、そんな説得力がありました。いや多分読まないんだろうけど。

宮部みゆき『ICO―霧の城―』
No.148
講談社ノベルス:2004
☆☆☆

同名ゲームのノベライズです。個人的に凄く興味のあるゲームだったのでずっと気になってた。ただ、いい加減な記憶だとほとんど一人称で進み、登場人物もかなり限られる、とのことだったのでどうやって小説にすんだろ? とも思ってた。

序盤の展開は見事です。流石宮部みゆき。ただ、イコが霧の城を実際に歩く辺りになるとちょっとゲームにおけるおつかい感をそのままなぞってる感じが出てきてだれた。ゲームがモチーフとなっていることの宿命か。

多島斗志之『少年たちのおだやかな日々』
No.149
双葉文庫:1994
☆☆☆

この人の復刊ペースは凄いよね。もう全部読みきったと思った頃にまた新しい作品が復刊されるみたいな。しかもいろんな出版社から。結構支持してる人多いんだろうなぁ……。

これまで読んできたものとはちょっと毛色が違う気がする。短編集。いずれも中学生男子が主人公というのと、ブラックオチというのが共通してる。一応「意外なオチ」ものなんだろうけど、伏線を綿密に張って、というよりは「世にも奇妙な物語」的(実際原作となったものアリ)な一般的感覚の裏をかくタイプのもの。『玩具修理者』が好きな人なら好きかも。

正直この人の作品の中ではちょっと微妙な印象。「嘘だろ」のラストで描かれる絵が全く変わってしまう辺りがかろうじて好みかなあ。
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by fyama_tani | 2008-07-27 19:06 | 本:国内ミステリ