島田荘司『占星術殺人事件』

No.3
講談社文庫:1981
☆☆☆☆
「(前略)今は顕微鏡単位までが捜査の対象だからね、そういう意味じゃ現代は犯罪者にとって夢のない時代です」

お見事なフェアプレイ。

受験問題的な一作。すなわち、今起きている事件を解くという訳ではなく、40年前に起きた未解決事件を当時の資料を元に解き明かす、という筋になっています。
その内容は怪しげな画家の手記から始まって、その通りに人が殺され、でもその前に画家自身が殺されているという良く分からないものであって、まあ一部の人には結構受けるでしょう。
そんな内容なので、雰囲気を楽しむとかというよりは、一緒になってこの謎を解いてやろう、という感じで読んだ方が良いのかもしれません。答えへの道筋は(それも結構あからさまな形で)示されているのですし……。
ちなみに、本作の最も重要な(そして最もインパクトがある)トリックは、某有名作品においてその中においても非常に評価が高い話にパクられている、というのはそれなりに有名な話。まあ、この作品が元ネタだと知らなかったら高い評価が付けられても仕方無いですかね。

関連本→
有栖川有栖『双頭の悪魔』:同じく、良質な問題と、それに対する解答の巧さ。
高木彬光『成吉思汗の秘密』:本人(島田)も認めているが、根幹はこんな感じの歴史ミステリかも。
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# by fyama_tani | 2006-05-09 23:02 | 本:国内ミステリ

片っ端から試してみる

Hocek et al. 「Synthesis of C-Aryldeoxyribosides by [2 + 2 + 2]-Cyclotrimerization Catalyzed by Rh, Ni, Co, and Ru Complexes」
Org. Lett. 2006, 8, 2051-2054.

[2+2+2]環化。微妙に核酸を思わせる基質を使っているけど、コアになる部分は至ってオーソドックスのような気がする。
とりあえず片っ端から試してみました感がある。タイトルに4つも金属種(TOCは5個)入れますか。まあこの辺なら試してもおかしくは無いと思うけれど。
むしろ引用とかを追っていけば[2+2+2]環化で使えそうな触媒を釣れそうなそんな気がしたのですが、実はほとんど読んでいないのでした。読んでいる所に何かが入って中断されたはずなのですが、それが何だったのか全く思い出せません。
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# by fyama_tani | 2006-05-09 22:58 | 化学:論文絡み

Triphenylmethanolの扱い

学生実習(実際自分はほとんど関わっていない)の生成物です。

実習のTAとかやるに当たっては(当然普段の実験でもそうあるべきだと思っていますが)扱う物質の物性を知っているかどうかでスピードが全然違う。言い換えれば、物性さえ知っていれば(ある程度の経験も必要ですが)、実習書なんか読まなくてもあとはアドリブで何とかなります。

そんな事考えながら高見の見物。

結晶性が高い物質だから再結晶を行う事は容易だと思います。ただ、高すぎる事が仇となって易溶媒のエーテルにも簡単には溶解してくれないんだな。そこに気づかず(っていうか学部3年生レベルなら言わないと絶対分からんと思いますが)入れすぎると当然冷やしても結晶が出てこないというオチ。

貧溶媒としてヘキサンを使っているのですが、小スケールならばこれだけで押すのが良いような気がします。自分なら大量のヘキサンで沸点まで加熱して溶解させる。

あと、再結晶の小技として、これで室温で放置してみる、という状態になったら一回氷冷してみるというのがあります。これで結晶が出てくるようならば望み有って事ね。これを確認したらもう一度加熱して溶解させて、あとは放置しておきましょう。

ところで、粗生成物の段階で若干蛍光性があるっぽい(純粋なTriphenylmethanolは白色)のですが、これ難なのでしょうかね。Ph3C-は色素で時々使われるから、色が付く事自体は分かる人には分かるのだけどねえ。

ちなみに私は昔3日ぐらい、Ph3Si-の導入方法を確立するとかうわ言のように言っていましたが、精製と化合物同定が面倒臭くてやめたという経緯があります。化合物自体にインパクトはあるから、もう少し真面目に追いかけても良いのですけどね。誰かやってくれませんか。
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# by fyama_tani | 2006-05-03 00:44 | 化学:実験その他

光見るなら液晶より有機ELでしょう。

Hou et al. 「π-Conjugated Aromatic Enynes as a Single-Emitting Component for White Electroluminescence」
J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 5592-5593.

前から気になっていたし、今日見たらページが付いていたので、一応メモ。

自前の錯体で怪しい二量体を作って光ったり光らなかったりとか。多分有機EL絡み。合成そのものも目新しいし、更に機能評価までやってる所が凄い。

実用化っていう面だとやっぱりまだ液晶が幅利かせてるけど、将来的には断然有機ELでしょうね。液晶でまだやれる事というと、超分子絡みか。

あと、Carbazoleってこういうものにも使えるのね。どちらかというと生理活性物質云々的な骨格だと思っていたので、これは意外な発見。
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# by fyama_tani | 2006-05-01 23:37 | 化学:論文絡み

麻耶雄嵩『夏と冬の奏鳴曲』

No.2
講談社ノベルス:1993
☆☆☆
「分析的キュビスムは、従来の三次元の二次元への当て嵌め方、つまり十九世紀までの遠近法によるカンヴァスへの三次元の再構成を拒否し、時間軸を交えた新たな物体の把握の過程を、時間の流れに沿って生じる複数の視点に基づく断片を、構築し再提示した画法なのです」

それがどうした。

問題作として割と有名かも。そりゃ、舞台が孤島で夏に雪が降るような所ですから。一応、探偵役はメルカトル鮎という事になっているらしいですが、出てくるのが(ノベルス版で)最後の2ページだけ。なんじゃそりゃ、という感じですね。

前評判として聞いていた話では、ラストが意味分からんとか、謎が沢山残っているとかそういう事でしたが、俺はそうとも感じませんでしたね。最後の2ページの使い方が巧いのでしょうね。大体の謎はそこで解決可能ですから……。そういう意味から、探偵の使い方は綺麗に決まっていると俺は思います。

あとは、話自体の必然性、という事なのでしょうかね。確かに「和音とは結局何だったのか」という命題にはきちんと答えていないような気がします。でも、これだけに延々ページ数割かれる、ってのもねぇ、と感じたのですが。キュビスムだの何だの、頑張って調べました感は伝わってくるのですが、流石に重い。桐璃の○○が○○されるとか、エピソード単体の使い方にはレベルの高さを感じるので、もっとストレートに勝負した方が面白かったかも。

関連本→
近藤史恵『凍える島』:孤島物で、結末への雰囲気作りが本作に近いような気がします。
舞城王太郎『煙か土か食い物』:「名探偵」の使い方が巧いという作品から。
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# by fyama_tani | 2006-04-30 21:46 | 本:国内ミステリ

今日は人生において重大な選択をしました。

嘘かもしれない。

具体的には、「何もしない」ことで意思表示をしました。

ずっと昔から選択肢の一つにはあったけれど、これを切る事でまたありえなかった選択肢に近づいたのでしょうか。

でも、「もの珍しさ」から言うとこっちだから有り。

難点は、一歩間違えると無職になることか。

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# by fyama_tani | 2006-04-30 21:28 | 雑記

米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』

No.1
創元推理文庫:2004
☆☆☆
ああ、絶対に憶えていたはずなのに。唸れ海馬。繋がれニューロン。ついでに時間も止まってくれれば言うことはない。

海馬は唸らない。「自分が覚えていないこと=自分にとって重要でない事」と解釈すれば万事うまくいきます<馬鹿

「日常の謎」ものの一作。高校一年生の小鳩君と小佐内さんが小市民の星を目指して事件にはなるべく関わらないようにするみたいな短編集。何か過去にあったような設定ですが、ベタに本人達がそう言っている(もしくはお互いが言う)科白から読み取れるだけで、状況描写からはあまり読み取れなかったのが残念。

重いテーマを扱っているわけでもなければ、論理のアクロバットを要求しているわけでも無いので、電車の中とかで軽く読むのには良いですね。それなりに意外性もありますよ。ただの自転車泥棒が実は○○に絡んでいたとはねー。ちょっと日常に焦点を当てているにしてはスケール大きくない? と思いましたが。長編にしても耐えられるレベルかもね。

そしてごく最近続編といえる短編集(店頭で見ただけ)が出ました。気になる人はそちらも併せて。

関連本→
北村薫『空飛ぶ馬』:この系統のミステリにおいて、教科書と言える存在でしょう。
乙一『GOTH』:登場人物の関係のようなものは似ている。よりダークな世界観を求めるなら。
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# by fyama_tani | 2006-04-29 21:02 | 本:国内ミステリ

1万円の余裕を作れば

今日本屋で適当に本を見ていて感じた事なのですけれどね。
もし、1ヶ月に1万円だけ、本にしか使わないという事を決めてみようと思いました。

これで例えば、2000円の本ならば5冊買えます。1500円の本ならば5冊買って、残りの金で文庫本が3冊は買えます。

今の生活環境から言って、これだけあれば1ヶ月の分量としては十分すぎるほどです。また、ここで言っている1500円とか2000円とかの本というのは、ハードカバーの小説を指しているわけではなく、情報を得ることを目的としている本の事です。単純な小説ならば文庫で10冊以上購入が可能です。

今まで、本屋に行って欲しいと思った本があっても「金が無いから」という理由だけであきらめたものがたくさんありました。もちろんこのうちのほとんどは、実際読み始めても最後までそのモチベーションが持たないものでしょう。しかし、それを見極めることなく捨ててしまうのはかなり勿体無い事であるはずです。

そこで、来月からちょっと実験的に始めてみようと思います。1ヶ月1万円読書生活。ちなみに、その分は食費でも削って何とかしようと思います。倒れない程度に食事でも抜きますか。

あのクリスティは幼少時代、育った環境が貧しかったので「お金がかからない」読書にのめりこむようになった、と言われておりますが、どう考えてもブルジョア的生活です。
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# by fyama_tani | 2006-04-23 22:52 | 雑記

ヴィレッジヴァンガードのPOP

さて、何書こう。
ちょっと前に気づいた事です。ちなみに、ヴィレッジヴァンガードに行った事が無い人には何のことかさっぱりな感じですかね。
あそこの特徴として、「POPの内容が店員の自由裁量になっている」というものが挙げられるのですが、数店舗回った人ならば何となく全体の傾向が似ているという事くらいは分かると思います。
その関係で自分が印象に残っているPOPというのが、フォント集の本に対して置かれた、「私たちの字も加えてくれませんか」みたいな一文。
本来、自由裁量と言うならば、それぞれの店、いや店員によって字は違っていても良いわけです。しかし、実際には(当たり前ですが)全店舗でマニュアルのようなものが存在し、その中には字体に対するものも当然ある。でもそれを表立って主張してしまうと最初の自由裁量という所と矛盾してしまうのです。
そんな中にあって、全体のフォントが存在する事を認めつつ、それを軽々とネタに昇華しているのは(実際これを書いた人はあまり深く考えていないと思うのですが)巧いと感じました。
要はそれだけ。
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# by fyama_tani | 2006-04-22 21:35 | 雑記

開始

もう少し公開性の高い文章をここに。
mixiからは一方通行で。
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# by fyama_tani | 2006-04-22 16:25 | 雑記