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芦辺拓『グラン・ギニョール城』

No.5
創元推理文庫:2001
☆☆☆☆+
「これってひょっとして、ブラックリストじゃないでしょうか」

どんな弁護士事務所の会話ですか。

2部構成。一つは20世紀初頭、掲載誌の廃刊により未完と終わった探偵小説『グラン・ギニョール城』で、もう一つは現代を舞台として、弁護士森江春策が巻き込まれた変死事件を元に『グラン・ギニョール城』に関わることになる話。両者が交互に出ながら進んでいきます。

もうこの時点で、何かあるな、という感じですね。

ネタに関してはそれなりに気づきました。アレとアレの数が一致していたので。まあ、悪くないと思います。でもあんなところにまで仕掛けがあるというのは気づかなかった。それが自分の読み込み不足と言えばそう言えなくもない。
虚構の作中作、『グラン・ギニョール城』ですが、これ1つの作品としてみてもかなり完成度が高いと思います。娯楽、って感じがしますよね。ヨーロッパの古城を丸ごとアメリカへ移築するという冒頭のアイデアとか、登場人物の造形とか、やり過ぎ感漂うところが逆に新鮮です。未完という設定上後半駆け足になってしまうのが惜しいですね。ちなみに、文庫版にはおまけとして、探偵役のナイジェルソープがちゃんと謎を解くショートショートがありますが、こっちはちょっと微妙かも。

関連本→
綾辻行人『迷路館の殺人』:これも作中作を鮮やかに使っていると思う。
宮部みゆき『R.P.G.』:○○だった、という点で。読んでいただければ分かるはず。
by fyama_tani | 2006-05-13 21:58 | 本:国内ミステリ