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石持浅海『扉は閉ざされたまま』

No.11
祥伝社ノン・ノベル:2005
☆☆☆
「いいんですよ。新山さんはおそらく、もう亡くなっていますから」

考えるべき材料があるとはいってもやっぱり第一選択とは違うんじゃないかなあ。

国内作品では非常に数が少ない倒叙ものですよー。その中にあっても次の二点から更に異色であると言わざるを得ません。具体的には、1.物語中の第三者に対して最後まで犯行が露見しない(まさに、タイトル通りという感じ)2.倒叙にする最大のアドバンテージである、「犯行動機の描写」が一切無い。伏見が何故新山を殺したかについては読者に直接明かされることの無いまま物語は進行する。相当変な話だ。

特に後者が意味することだと思うのですが、本作品はリアリティとは別個のところにある、純粋な思考実験なのです。解答者であるところの読者には予め「伏見が新山を殺している」という情報が与えられているわけですが、では仮にこの情報が無かったとしても上記の事実を証明することは可能か? という問題。だから、優佳の言動に対して「普通そんな可能性を考えて指摘しないだろう」というような突込みをしてはいけないのでしょう、多分。

それほど長くないので、一気に読んでしまった方が良いです。ちょうど2時間ドラマを観るような感覚でしょうか。

関連本→
高田崇史『QED 式の密室』:これも閉ざされた部屋の扱いが独特。一気に読むのが望ましいつながり。
古畑任三郎、風間杜夫が犯人役だった回:あえて古畑を挙げる。「犯行が露見する前に犯人が分かる」名作。
by fyama_tani | 2006-05-27 21:49 | 本:国内ミステリ