古処誠二『未完成』

No.43
講談社ノベルス:2001
☆☆☆☆
「いやいや、あれはポンカン」
「は?」
「内地の人は、よく間違えますな」

種があると面倒で食べなくなる。そんな不健康生活まっしぐら。

氏のデビュー作、『UNKNOWN』が注目されたきっかけというのは、普段なじみが無く、そしてミステリの世界においてもあまり着目されることがなかったであろう、自衛隊を舞台にしたという点にあると思うのですが、それに続いてこちらも自衛隊が舞台。しかし、『UNKNOWN』がいわゆる普通の駐屯基地が舞台であったのに対して、本作の舞台は離島の通信基地。すなわち、自衛隊的な観点からしても特殊なところを扱っているのです。

活躍するのは防衛部調査班の朝香二尉と、『UNKNOWN』でたまたま朝香二尉の助手役を務めたことで、またコンビを組まされることになった野上三曹。物語は、主に野上三曹の視点から語られます。

肝心の事件は、射撃訓練中に消失した小銃の行方と、その犯人探し。防衛部調査班の内部調査という名目なので、当事者以外には調べていることを一切知られてはならない、という状況が物語り全体に緊張感を与えます。あと、ポイントは、事実だけを抜き取れば別に舞台が孤島である必要無いんじゃない? みたいなところでしょうか。

この謎解きの過程において、二転三転するディスカッションもさておき、島の人々や、基地に勤務する自衛隊員の様子などが丁寧に描かれていきます。画一的になりかねないところ、ちゃんと書き分けが上手くきいているので、多目の登場人物もあまり気になりません。

そして明かされる真相、と同時に、全く異なった問題にも光が当たることになります。この作品以後、氏は戦争を題材にした小説に活動の中心を移していて(未読なので自信無し)、ミステリ的な作品は書いていないのですが、これはそういったことの一種の伏線なのでしょうか?

でもやっぱ謎解き部分も面白いし、このキャラクター設定も魅力的だと思うので、もう一度こちらに戻ってきて欲しいなあと自分としては思うのです。

関連本→
多島斗志之『不思議島』:同じく離島が舞台。「孤島」では無いという点も同じ。人物の動きで読ませる点も同じ。
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by fyama_tani | 2006-09-27 22:35 | 本:国内ミステリ