麻耶雄嵩『翼ある闇―メルカトル鮎最後の事件』

No.61
講談社文庫:1993
☆☆
「愛あるかぎり戦いましょう。命、燃えつきるまで」

何だそりゃ?

中世の古城をそのまま持ってきたかのような屋敷が舞台。さらにそこに住む人たちは莫大な財産を持つ一族(何故かみんなが都合良く集まっている)。で、事件に呼び出されるのは「名探偵」と認識している私立探偵。ちなみに時と場所は現代の京都。

流石にそれは無いんじゃないの? という位に人工的。別にフィクションの世界である以上、それはそれで構わないのですが、必然性が欲しくなるのは確かですよね。ただ、この話「そんなことはありえないだろう」という事の連続。ギャグにしては趣味が悪い。

先に同じ作者の『夏と冬の奏鳴曲』を読んでいた身としては、そっちの作品でも出てきて、かなり効果的な役割を果たしていたメルカトル鮎が出てくるところで、それなりの期待をしたのです。本作においてもメルカトル鮎の作品に対する関わり方は通常のそれとはかなり異なるものではありましたが……うん微妙だ。最後の最後の逆転が薄めてしまったような気がする。

この作品が主に叩かれる理由は、「登場人物の性格が悪すぎる」という事らしいのですが、その点はあまり気になりませんでした。それはそれでこの人のオリジナリティ、という感じもするし。ただ、チャレンジングな事をしたいというのは分かるので、そこに常識的な尺度を少し入れてもらいたかった。そうすると結構まとまりが良くなるかも。

関連本→
殊能将之『黒い仏』:登場人物がこっちの本に出てくる石動戯作とオーバーラップしてきた。
法月綸太郎『密閉教室』:ある転換点で、全く同じ事を期待してしまった。結局どっちもそれは実現せず。そういうパターンのミステリって無いのだろうか。
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by fyama_tani | 2007-01-06 23:12 | 本:国内ミステリ