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笠井潔『薔薇の女』

No.74
創元推理文庫:1983
☆☆☆
「エルマフロディット。ジャン=ポール、あなたったら本当に、人殺しに直接関係のないことといったら何にも知らないのね」

まあ、ほとんどの人はどちらも知らないでしょうね。

矢吹駆シリーズその3。何故か原宿のブックオフに行くとこのシリーズが見つかるので、惰性で買ってしまいます。最初は猟奇連続殺人事件が主題。普通、この手の題材を扱う際には徐々に話が進んでいってそれに伴い連続性が明らかになっていくという構成がとられると思うのですが、本作ではいきなり4連続で、明らかな共通点が提出されます。しかし、これはあくまでフリでしかなく、謎の本質は次第にホテルでの二重殺人、そのうち片方の被害者が取った行動「アリバイ工作をしなくて良い人間が行ったアリバイ工作」の意義に移っていくと。

電車の中で読んでいるから、というのもあるのかもしれませんが、とにかく謎の構成が分かりにくい。結局大雑把に捉えるくらいしかできませんでしたよ。あと、ジョルジュ・バタイユがモデルと思われるジョルジュ・ルノワールと矢吹駆の論戦も消化不良。第一犯人決定にはあまり関わっていないような気が。動機の説明という点でも、そこまで難解とも感じられないし……。これは時代性の問題もあるのかなあ。

ただ、解明部は中々。結構綺麗な論理の使い方だと思う。素人探偵が捜査力でプロに勝てるわけないのですから、こういうパズル的な解き方もアリだと考えます。

ところで、本編で重要な位置を占める引退した女優、ドミニク・フランスにはモデルがいるのでしょうか。全くの創作だとしたら物凄い緻密さですよね。

関連本→
島田荘司『占星術殺人事件』:どうしても本作のモチーフが思い出されてしまいます。両作品の「個体認識に関する知見」を比較してみると面白いかも。
by fyama_tani | 2007-04-04 21:55 | 本:国内ミステリ