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竹本健治『将棋殺人事件』

No.79
創元推理文庫:1981
☆☆☆
「たどり来て、未だ山麓……か」

ここまで絶望的に輪郭がつかめない作品も珍しい。

『囲碁殺人事件』に続く、ゲーム3部作その2。前作で囲碁の天才として登場した牧場智久少年は将棋の腕もかなりのものだった、ということで今回のテーマは将棋。

といっても将棋が主題かどうかは極めて怪しいところです。むしろ物語の中心にあるのは都市伝説。それをそっくりなぞったかのような状況が大地震の起きた中部地方で発見され、その謎の解明に動き出す――、という流れです。

噂の変容を追っていくプロセスはかなり精密。でも、だから何なの? という思いが常につきまといます。そしてそこに平行して詰将棋雑誌に投稿された作品にかかった盗作疑惑が絡んでくるのです。

それらが徐々に解決に(たとえそれが間違ったものだとしても)向かっていくのが普通の話、でも本作はそういった一般的な進行を拒否します。ところどころに暗合は認められるものの、謎は何も解決することなく終盤まで進行し、それが異様な雰囲気を与えます。

これだけの大風呂敷に対して、解決編がちょっとあっさり過ぎるのが難点? 五里霧中の展開の割にはあっさりしたラストだなあと。「実は大したことじゃないんだよ」という事が言いたかったのかも。

関連本→
荻原浩『噂』:都市伝説を扱ったものとしてはかなりメジャー? まあ読みやすいし。
by fyama_tani | 2007-05-13 20:25 | 本:国内ミステリ