島田荘司『奇想、天を動かす』
No.85
光文社文庫:1989 ☆☆☆ 「いったい君は、何をやってるんだ?」 ええ本当に。 消費税が導入されたばかりの日本が舞台。400円の買い物に対して「12円」が請求されているところが懐かしいですなあ。 その消費税を請求されたことに対して殺人を犯した老人。しかし、主人公の吉敷刑事が調べだすと、超意外な真相が出てくる、という筋立て。 中盤以降の主題となる、北海道の鉄道網を舞台とした事件は、まさに奇想と呼ぶのにふさわしい壮大さで、「こんなの解決できるの?」と不安にさせるレベル。まあ、それをちゃんと着地させているからこの作品の評価は結構高いのですけれど。 うーん、でも2つの列車間の移動に関してのミッシングリンクとなるある特殊な要因、これ実は知ってたんですよねぇ……。wikipediaで。普通だったらこんなの地元の一部の人間以外気づくわけ無いし、それをネットも何も無いこの時代にきちんと調べたってのは凄いと思います。ただそんなネタも軽く書かれているのが今のネットが普及した時代か……、と。嫌な時代ですねぇ……。 作中で起きる事件はまさに本格推理と呼ぶにふさわしいものですし、ネタだけ取り出せば一級のトラベルミステリとも言えるでしょう。でもこの作品、社会派という捉え方をされてもいる。確かに、それ系のことが根幹にあると言えなくも無いし、それに関する言及もちゃんとあるのだけれど、わざわざ一緒にする必要あるのか、と思った。ストイックな謎解きものにした方がより深く味わえるんじゃなかろーかと。 あと、何でこの事件に「限って」継続調査をしなければならないのか、という点も疑問が残るなぁ……。出てきた事実はでかいけれど、それは予測できないだろうと。ドラクエ7に通じるような取って付けた感を感じてしまったのがちょっと残念。 関連本→ 清涼院流水『コズミック』:これも大風呂敷広げ系。結局、広げすぎてつまらん結論となってしまったという悪しき例。
by fyama_tani
| 2007-06-02 23:01
| 本:国内ミステリ
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小説の紹介とか化学に関する事とかを織り交ぜながら適当に。
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