石田衣良『少年計数機―池袋ウエストゲートパークII』
No.89
文春文庫:2000 ☆☆☆☆+ 若いやつならどう考えても、昼近くまでは寝てるだろう。長く寝られるだけのスタミナがあるからね。 なるほどそうなのか。自分はずっと体力が無いと思っていたが、これが真ならもの凄くスタミナがあるということか。 「池袋ウエストゲートパーク」シリーズその2。シリーズものは2作目で真価が問われる。ここでキャラ小説に走ってしまうか、ストイックな路線を続けて行くか。前作を読む限り、キャラ小説路線でいける可能性というのは十分あったと思います。 が、この作品(当時今ほど話題になっていなかったというのもあるのかもしれませんが)に関しては全くそういう気配がない。もちろん、前作のエピソードを踏まえて、マコトのところに池袋のもめ事が当たり前のように持ち込まれてくるという状況はありますが、あくまで何か一つの要素に頼ってしまうということが無い。これは凄いと思う。 例えばGボーイズのキング、安藤崇との関わり。凡百の作品だったら彼のキャラ設定と能力に偏った書き方がされるに違いない。でも、本作収録の「銀十字」はいきなりマコトが安藤とGボーイズの力を借りられないという状況から始まる。しかも、ここで軽々とお年寄りのある面について描いてくる。これは正直言って凄すぎる。ラストまで一切のスキが無い作品だと思う。ある作品(タイトルを挙げること自体がネタバレになるので秘密)のほとんどの人が見破れなかったとされるどんでん返しも、もしかすると刊行順が前な本作を読んでいれば見抜けたかも。それくらい時代の先を走っていると言える。 こだわりを持って書かれている脇役が、突然切られてしまう、ということに違和感は感じなくも無いが、かえってそのことがそれらのキャラ魅力に引っ張られた書き方はしない、という意思表示なのかも。このシリーズは多分相当凄い。 関連本→ 北村薫『夜の蝉』:これもシリーズ2作目で完成度の高さを見せていると思う。収録作「六月の花嫁」は本当衝撃。
by fyama_tani
| 2007-06-30 16:51
| 本:国内ミステリ
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小説の紹介とか化学に関する事とかを織り交ぜながら適当に。
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