法月綸太郎『生首に聞いてみろ』
No. 107
角川文庫:2004 ☆☆☆☆+ 「うん。理由を聞いても、まともに取り合ってくれない。自分の胸に聞いてみろと、わけのわからんことを言うばかりでね。そんなふうにされたら、こっちもだんだん腹が立ってくる。芸術家肌なんて言い訳は、身内には通用しないから(後略)」 身内以外に通用してしまう、というのも問題なような。いい大人だったら。 この人は同名の主人公、法月綸太郎を探偵役にした話を延々書いているのですが、俺はこれが初めてです。「このミス」1位ということで。 万人受けするとは思えなかったけれど、凄く面白かった。素直に謎解きの楽しさを魅せてくれる作品です。論じられていることをストレートに表現してしまうと、「首がない」とか「入れ替わり」とか古典的な感じがあるのですが、石膏像(重要な登場人物の1人に石膏像を専門とする現代彫刻家がいる)を間に挟んで、非常に現代的に彩ってくれています。 確かに素人探偵の綸太郎はともかく、警察がそこまでミスしねーだろみたいな点はありますが、別に実録警察小説というわけではないし、それによって事件に新しい光が当たっていくという点では、悪くはないと思います。ご都合主義的な解決編もね。偶然が大きな要素になっている作品、最近はそれなりにあるから目くじら立てるほどのことでもないと思うけどなぁ……。 あと、この作品良い意味で2時間ドラマ向きだと思う。キャラクターがそれなりに立っているし、石膏像というのは映像的にもインパクトがあるだろう。また、家族を扱ったお涙頂戴ものと捉えることもできる。警察の描写も(前述したようにあまり本気っぽい感じではないあたりが)割とコメディタッチで脇が光りそうだし。そしてトリックも原作に忠実にやってくれればそこら辺に転がっているものよりずっとクオリティの高いものになるんじゃないでしょうかねえ。 関連本→ 有栖川有栖『双頭の悪魔』:これも解決編までの思考の転がり方で大分楽しめる作品。
by fyama_tani
| 2007-11-10 14:36
| 本:国内ミステリ
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小説の紹介とか化学に関する事とかを織り交ぜながら適当に。
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