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嶽本野ばら『下妻物語 完―ヤンキーちゃんとロリータちゃんと殺人事件』

No. 121
小学館:2005
☆☆☆
「けど、井の中の蛙とは、よくいったものだよな。胃袋の中にいたんじゃ、何も買えないものな。喉を通って口から出るか、ケツの穴から出るか、どちらにしろ外の広い世界に出なけりゃ、欲しいものは買えずじまいだ」

これ、「胃の中の買わず」と勘違いしてるってすぐに変換できました? 作中でも感心されてますが、物凄いミスリードです。

映画化された『下妻物語』、その続編です。キャラクター勝ちだよなあ。ロリータ少女はともかく、こんなヤンキーでも下妻ならばいるかもしれない、と思わせるその絶妙の舞台設定がナイス。

サブタイトルにもある通り、ロリータ少女の桃子とヤンキーのイチゴが、今度は殺人事件に巻き込まれる、と。しかし登場人物は全てバカなので、まともな議論を期待してはいけない、という作り。

前作では比較的まともに書かれていた桃子の祖母もトランス踊ってたりするし、BABY, THE STARS SHINE BRIGHTの礒部社長もガンオタであることが発覚したり……もう締める人がいないというのも小説としてどうなのかと思いますが。ってか、礒部社長って社名含めて思いっきり実在の人物なわけだが、いいのかこんな書き方して。

これで完結、ということで物語を着地させるために、桃子の精神的な成長過程を織り込んだ作りになっています。そのためか、ここまでぶっ飛んだ登場人物たちの割には小さくまとまってる、という印象も受ける。この路線でずっと書き続けてくってのもそれはそれで微妙だし、2作ですっぱりやめる、ってこと自体は悪くないと思うけど(それに、作者逮捕されちゃったし)。あー、でもこの後すぐに開通するつくばエクスプレスでアクセスが飛躍的に良くなった後の設定も読んでみたいかも。秋葉原の書かれ方も若干変わってくるだろうね。

ミステリとしては、ある作品のネタバレが思いっきりされていることに注意。超有名作だし、「そのくらい読んでおけコノヤロウ」という作者のメッセージなんだと思います。ミステリとしての骨格をlこの作品に求めちゃいけないんだろうし。でも桃子がそれなりの量のミステリを読んでいるというのは何か不自然な。『黒死館殺人事件』について語れる高校生とか凄く嫌だ(でもちょっとうらやましい <未読)。

関連本→
舞城王太郎『暗闇の中で子供』:これもミステリっぽく見せておいて、その実ミステリを期待してはいけない作品。というかこれこそ「アンチミステリ」だと個人的には思うのだが。
by fyama_tani | 2008-01-27 22:31 | 本:国内ミステリ